悪しきポジション・フットボール(天皇杯4回戦)。

カップ戦は勝つか,負けるか。


 ならば,最優先に置かれるべきは「結果」。


 確かにその通りですが,結果を引き出すためのアプローチをしっかりと準備していたでしょうか。


 天皇杯4回戦であります。通常ならば対戦相手をタイトルに掲げるところですが,そんな段階になっているようには思えません。


 と言って,“モチベーション・クラック”が発生していたとは思いません。シーズン最終盤にして,チームになっていないチームで戦うような段階でしかない,と思えるのです。


 端的に。


 ひとりひとりのスターターがどこかに,不安を抱えてはいないか。


 パスを繰り出したとして,スペースに走り込んでいくのか。スペースへのフリーランを仕掛けたとして,果たしてボールを引き出せるのか。パスを収めたとして,パスを繰り出した選手がさらに仕掛けを強めるために追い抜いていくのか。


 戦術的な約束事について,「確信」が浅いように思えるのです。そのために,動き出したことを「確認」するための時間が必要になってしまっているようにも。これでは,仕掛けを強めようにも,リズムを失うことになります。


 そして,スターターのコンディションに左右される,その振れ幅が不要に大きくもなってしまう。


 何より,チームから流動性が失われてしまいます。もともと,シザースなどを積極的に繰り出すようなフットボール・スタイルではありませんが,個を連動させて仕掛けを組み立てる,という形になっていない。


 攻撃面だけではありません。守備面でも,ひとりひとりの守備意識が連動していない。


 ボールをロストしたタイミングで,誰がボールにアプローチするのか,が不明確です。それだけでなく,追い込み方も不明確です。追い込むべきポイントも,揺らいでしまっているように。


 そんな状態だから,ボールを「跳ね返す」ような守備応対にしかならない。


 これで,「チーム」と呼べるのかどうか。


 指揮官は,どこかで”ポジション・フットボール”などというキーワードを持ち出したような記憶がありますが,その概念はまさしく流動性の乏しい,相手に守備ポイントを明示してしまうような「悪しきポジション・フットボールでしかない。この状態では,3か4か,などという話はまさしく,「数字のお話」でしかありません。失われた約束事を取り戻さないと,この「悪しきポジション・フットボール」からは抜け出すことは難しい。トレーニングの持つ意味が,より大きくなっているものと思います。