対新潟戦(08−30A)。

変化と言うより,原点回帰。


 ブレのないことが求められるシーズン最終盤にあって,ひとつの解だと思います。そして,チームは「自律的に」原点回帰という選択をしました。


 少なくとも,チームは「戻るべき場所」を意識している。その証明になったゲームかも知れません。


 リーグ戦は,自力の持つ要素と他力の持つ要素が絡み合っています。今節は,「他力」の要素も大きく作用しています。いますが,「自力」の部分で勝ち点3を積み上げていくことができなければ,他力を生かすことができないのも確かです。


 ひとつひとつ,積み上げていく。その段階に立ち戻るきっかけになれば,と思います。


 いつものように,の新潟戦(アウェイ)であります。


 ごく大ざっぱに印象を書けば。


 前半は,ネガティブな意味での「ポジション・フットボール」から離れられなかったな,と思います。


 客観的な表現を使うのであれば,「慎重」という単語も当てはまるでしょう。でしょうけれど,確信が持てない状態で戦っている,とも受け取れます。特に,浦和のフットボールを機能させるためにはアウトサイドの機能が落とせないのですが,アウトサイドが攻撃面で機能不全に陥ってしまいます。具体的なイメージが描ききれないために,“バランス”という要素をチームに過度に意識付けてしまったように見えます。仕掛けるためには,ある程度リスクを背負って相手陣内へと侵入していかないといけないのですが,カバーリングやポジション・チェンジに対する確信が持てないために,ポジションを大きく崩せなくなってしまう。


 どう動けばいいか,どう動くかがイメージできなければ,結果として慎重にならざるを得ない。やはり,戦術的な軸がないことがチームに大きな不安を与えてしまっているように感じました。


 対して後半は,チームとしてのリズムを重視したパッケージになったな,と。


 パッケージ,その形に変化があるわけではありません。ですが,熟成度に大きな違いがあります。コンビネーションを引き出しやすいパッケージになった,と言うべきでしょうか。


 組織,という方向から組み立てた戦術的な約束事も,当然「戻るべき場所」です。この約束事が確立できないままだったから,踏みとどまれない。そういう側面もあります。


 ですが,「個」という方向性から組み立てた約束事もあり得ます。個からの約束事がコンビネーションではないか,と思うのですが,後半のパッケージはそのコンビネーションを引き出しやすいものになった,と思うのです。そして,チーム全体が描いていくべきイメージが具体性を高めていく。


 先制点,そして決勝点となるゴールを奪取した局面にしても,チームがいままでに描いてきたイメージを再び描くことを意識した結果であるように思うのです。確か,FC東京を追い掛けている後藤さんだったでしょうか,浦和の攻撃を機能させるためには「いままでの浦和」を熟知している選手と新規加入の選手をトップで組ませること(=新規加入の選手だけでトップを構成すべきではない)という指摘をしていたか,と思うのですが,このことも「コンビネーション」の重要性をアウトサイドから指摘したものだと思っています。


 「戻るべき場所」。


 アウトサイドだけを考えれば,03シーズンまでのパッケージへと戻ったとも言えます。言えますが,03シーズンまでのパッケージが04シーズン以降の基盤となっているのも確かです。03シーズンまでのツイン・アンカーからリベロとディフェンシブ・ハーフのコンビを流動化させて攻撃に分厚さを作り出す,という変化はしていますし,攻撃スタイルも変化を続けていますが,ベーシックな部分では03シーズンのパッケージをキャリーしているとも言えます。


 もちろん,このパッケージからの進化は大きな課題です。


 09スペックと表現できる,しっかりとした組織性は浦和がステップアップしていくためには避けて通れないとも思っています。ですが,残り4ゲームという段階で基盤にかかわる課題を持ち出すよりは,いまあるコンビネーションを徹底して引き出し,チームとしての確信を深めていくことが求められるでしょう。その意味で,「戻るべき場所に戻った」ことは評価すべきだと思っています。