遂に高みへ(高円宮杯2008)。

ともすれば,強みを消し去ることだけに傾いてしまう決勝戦


 彼らは,自分たちの強みを存分に表現してくれたと思います。


 もちろん,中野田の雰囲気が彼らの背中を支えてくれたこともあるでしょう。でも,それだけではないだろう,と思います。


 2種登録チームが,高校,クラブ・ユースを問わずに戦うトーナメントが,高円宮杯です。地域でリーグ戦を戦い,上位チームが進出するトーナメントでもありますから,チャンピオンズ・リーグ方式,などとも言われます。ですが,高円宮杯が最も意味があると思うのは,チーム・ビルディングの方向性が微妙に違う高校,クラブ・ユースが同じピッチで戦うことにある,と思っています。


 たとえば,高校チームの持っているリアリズムは,クラブ・ユースにはなかなか感じられない要素でもあります。だからこそ,真剣勝負に意味がある。強みを消し去りながら,同時にチャンスをつかんでいくという,「カップ戦」を戦っていくためには不可欠なリアリズム。そのリアリズムに,今季も準決勝で対峙することになります。そのリアリズムに対し,延長戦には持ち込まれたものの,リアリズムを跳ね返してみせた。


 そんな自信も,中野田のピッチに放散されていたように思うのです。


 90分を戦い終え,バルコニーへと上がっていく選手たち。


 かつて浦和のボスであった犬飼さんから表彰を受ける。ちょうど,リーグ戦を制した06シーズン,メダル授与のためにピッチに立っていたのも犬飼さんだったことを思い出しながら,浦和が戴冠するときの中野田との縁,というものを感じていました。


 昨季,越えられなかった壁をしっかりと乗り越え,高みを陥れた。まずは,そのことに最大限の敬意を表したいと思います。ゲームのことはまた追って。