対大宮戦(08−25A)。

カップ戦のような日程であります。


 置かれた状況も,ある意味ではカップ戦的かも知れません。


 確かに,単なる1/34以上の意味を持つ“Derby Match”ですし,このゲームの重要性はここからも導けます。スタンディングとは関係なく,厳しいゲームになるのがダービーです。その中で「勝ち点3」を奪取していかなければなりません。


 加えて,リーグ戦の順位を冷静に考えれば勝ち点差を広げられるわけにはいかないし,水曜日に控えているゲームでは,単なる「勝ち点3」だけでなく,守備的な安定性も重要な要素として求められてきます。それだけに,守備的な安定性をベースとして「勝ち点3」奪取を最優先項目に置くのは当然,とは思います。この意味では,しっかりと奪うべきものを奪ったと評価すべきゲームです。


 ただ,シーズン終盤に差し掛かっているからこそ,の課題もあるように思います。


 ということで,例によって(以下,例によって省略)の大宮戦であります。限定的な印象にとどまりますので,ポイントを絞りながら。


 まずは,収穫面であります。


 トップを「使う」という攻撃の形が見えてきていること,でしょうか。逆の視点から見るならば,(いささか,タイミング的には遅いと思いますが)トップが浦和的な「使われ方」にスタイルを調整できてきているように感じます。


 距離感,という部分ではまだ調整できる余地はあるかも知れませんが,基盤としてトップを動かして相手守備ブロックを崩していく,という方向性が「やっと」見えてきたかな,と感じます。中盤で攻撃リズムをコントロールする,そのための重要なピースがピッチに戻ってきたことも要素として大きいでしょう。


 当然,相手からすれば要注意です。


 相手守備ブロックが,中盤に意識を傾ける。となれば,アウトサイドが仕掛けでの自由度を増す局面ができてくる。そして,ディフェンス・ラインがつり出されているならば,裏を狙う意識がトップとかみ合うことで,決定的な形ができてくる。先制点(にして決勝点)奪取の局面は,チームとして描いておくべき戦術的なイメージが,しっかりとピッチに表現できたものと感じます。


 対して課題でありますが。


 「戦術交代」をどう使い,戦術的なメッセージを伝えるか,です。この部分での課題が,今節においても見えていたように思うのです。


 しっかりとした守備応対,という基盤にはできるだけ変更を与えない。しかし,ボール・ホルダーを追い込んでいくポイントを押し上げていきたい。同時に,スペースが広がりつつあるのだから,追加点奪取を狙うのであればカウンター・アタックを意識したパッケージへとギアチェンジを仕掛ける。


 今節,指揮官が描いたプランはこのようなものではなかったかな,と。


 ただ,タイミングとして80分前後の時間帯は適当だったか,と感じる部分があります。


チーム・バランスが崩れるリスクを回避しながら,戦術交代を仕掛ける。恐らく,指揮官の意図はそんな部分にあるでしょう。あるでしょうが,中盤でパス・コースを潰し切れていない状態での守備応対となれば,守備負担は相当に重いはずです。最終ラインの守備応対という部分からも,中盤のバランスは重要な要素であるはずです。


 昨季はリアリスティックな戦術を貫いたことで,チームに相当程度の負荷を掛けていました。結果として,チームのコンディションに大きなネガティブを与え,失速を経験することにもなっている。戦術交代に伴うリスクも理解できるけれど,交代しないことで発生するリスクにも意識を振り向けておくべきだろう,と感じます。


 昨季の轍を踏むわけにはいかない。


 チームの基盤をスターターだけに求めるのではなく,もっと大きくしてほしい。スターターだけが戦っているのではなく,リザーブなどを含めた“チーム”が全体として戦っていかなければ,過酷な日程を乗り切り,狙う高みを陥れることは難しい。リーグ終盤に差し掛かり,厄介な時期になりつつあるからこそ,昨季の教訓をさまざまな形で生かしてほしい,と思います。