「完成品」もいいけれど。

ウェンブリーだったり,アシュバートン・グローブだったり。


 イングランドを代表する競技場ではありますが,意外なことにシューボックス・スタイルの競技場ではありません。なるべく,どの位置からも「死角」をなくすという方向性でスタンドのデザインがされます。どちらかと言えば,ベルリンにあるオリンピック・シュタディオンであったり,国立霞ヶ丘のアイディアを現代的に解釈し直したもの,と言えそうです。


 とは言え,この2つの競技場はともに同じ設計屋さん(HOK Sport・英語)が手掛けていますから,基本的なアイディアに大きな違いは出ないでしょうけどね。


 また,デザイン的にしっかりと完結していることを狙った競技場も増加しています。


 ヘルツォーク&ド・ムーロンが手掛けているアリアンツ・アレーナであったり,間もなくオリンピックのホスト・スタジアムとなる「鳥の巣」などはその典型でありましょう。


 確かに,アーティスティックだな,とは思いますが。もうひとつの方法もアリかな,と思うのです。


 いささかマクラを大きくし過ぎましたが。ガンバ大阪の次期スタジアム計画に関するこちらの記事(読売新聞・大阪版)と,日刊スポーツさんの記事をもとに。


 計画されているのは,エキスポランド敷地内の一部に,35,000人程度を収容可能な,全席指定を可能とする“All Seated”などのFIFAが要求する基準を充足するスタジアムを,ということのようであります。


 なるほど・・・,と思いました。


 万博記念は,IAAF基準から考えても,あるいはJAAFが要求する基準から考えたとしても,トップ・カテゴリのトラック&フィールドを開催できる競技場ではありません(JAAF第1種公認ではありますが,国際大会をオーガナイズするという意味では難しい,「既存公認」であります。)。サブ・トラックを備えているわけではありませんし,そもそもトラックが8レーンで設計されています。国立霞ヶ丘と同じく,旧基準での陸上競技場になっているわけです。ホスピタリティから考えても,いささか古い設計であることは確かです。ならば,万博記念を大幅に改修すれば(=トラックを潰してピッチレベルを下げ,アシュバートン・グローブのようなセイン・ピスタのスタジアムへと改修すれば),と考えるところですが,地盤の問題で大きなスタンドを建設することが難しいとの判断もあったようです。


 そこで,なのですが。


 このスタジアムに関わるひとにご提案を。


 拡張可能性を持ったスタジアムを設計されては?と思います。デザイン的には,ともすればオシャレではなくなるかも知れませんが,ゴシックな迫力というのもあります。まだ「神戸ウィング」に可動式屋根が設置されず,ゴール裏スタンドが仮設を含めて大きかった時期,決して美しい姿ではなかったかも知れないけれど,フットボールを開催する競技場としての姿としてはかえって望ましいような印象を持っていました。


 FIFA基準を充足しつつ,同時に将来的な拡張を織り込めるデザインがあれば。フットボール・フリークとしては,「鳥の巣」のような高いデザイン的な完結感がなくとも,そちらのほうが望ましく思ったりするのです。