対東京ヴェルディ戦(08−17)。

いきなり,で申し訳ないのですが。


 なんとも不思議な感じのするゲームだな,と思います。


 プロフェッショナルならば,最も重要な要素である「結果」。この,結果という部分から言えば,間違いなく評価されるべきゲームとなるでしょう。そして,自力と他力が巧みに作用してくれたことで,再びリーグ・テーブルの最上位へとクレジットを戻してもいます。


 ですけれど,であります。


 指揮官の狙うパッケージは,どうしても「奇策」の域を超えるものではないと思うのです。中盤での機動性であったり流動性が高まっていかないと,本当の意味で指揮官が狙う“コンパクトなフットボール”を表現するのは難しいのではないか,と思うのです。


 このゲームでは,可能性を感じる局面もありました。それだけに,戦術面でのさらなる熟成を,と思ってしまうのです。


 まいど(以下省略),のヴェルディ戦であります。


 まずは,ポジティブな話から。


 端的に。ダブル・アウトサイドの可能性を感じる局面がかなり見られたこと,であります。左のアウトサイドを担当していたのは,相馬選手。そして,左のストッパーに入っていたのは堤選手であります。彼らが,4とほぼ同じ機能性を見せてくれた,ということですね。


 確かに,シンプルにボールを展開させる,という局面もあったわけですが,仕掛けられるタイミングでは堤選手が積極的にアウトサイドを駆け上がっていきます。そこで相馬選手を追い越す,あるいは相馬選手にボールを預け,さらに相馬選手を追い越すようにフリーランを仕掛けていく。相馬選手が,アタッキング・サードかなり深い位置熨すペースを狙ってパスを繰り出し,そのパスに堤選手が反応していった局面(残念ながらラインを割ってしまいましたが。)もありました。あくまでも,左アウトサイドに限定した話,ではあるのですが,ほぼ4を使っているのと変わりない時間帯を生み出すことができていました。


 “ピッチを徹底的に広く使う”という部分を意識するのであれば,静的か,動的かという区別によらずサイドの機能性を高めていくことが重要でしょう。意識的に相馬選手を高い位置でプレーさせ,堤選手とのコンビネーションを,という狙いがあったかどうかは別として,「実質的な4」状態を作り出せていた,というのは収穫です。


 ただ,収穫だけというわけにもいかないような。


 アウトサイドに起点を,という意識が「左」では見えてきています。では,「右」をどうするのか,ということになります。


 左肩を上げた状態を作り出す,ということは右アウトサイドがちょっと下がった位置に,ということになります。“擬似的なSB”ということになりますが,そのSBと誰が左のような関係性を作り出すのか,ということです。積極的に仕掛けるべき局面では平川選手の仕掛けを促し,縦に送り出す,というイメージをピッチに描き出せれば,というわけです。


 この流れで言うならば。


 確かに,アタッキング・サードでの仕掛けは相当な脅威ですし,得点感覚を思えば高い位置で使いたい,という意図も理解できないではないのですが,チームをコンパクトに,高い位置から積極的に仕掛けるというコンセプトを早期に浸透させたいのであれば,中盤に配置するのではなく,最終ラインに構えさせるべきなのではないか,と。


 トレクワトリスタが戻るまでは,3−4−1−2(理想を言ってしまうならば,流動的に4−2−3−1を使いこなしてほしいところです。)というよりも3−4−3に近いパッケージで,アウトサイドを意識した戦い方もあり得るはず。アヤックス・スタイルですね。そのときに相馬選手がウィンガーとして位置付けられるとして,もうひとりのウィンガーというように考えていけば,(アヤックス・スタイルを意識しているはずの)指揮官の描くパッケージにはどこかにズレがあるようにも感じられるのです。


 浦和の攻撃を機能させる要素は,「流動性」であるはずです。そして,流動性の基盤には守備意識であり,ポジショニング・バランスが置かれるはずでもあります。


 今節は,左アウトサイドで数的優位を構築した中からの仕掛け,あるいはディフェンシブ・ハーフからの仕掛けなど,流動性を感じる時間帯が増えてきています。その流動性をさらに高めるためには,オリジナル・ポジションに戻すことが必要ではないか,と思うのです。


 ・・・ともかくも。結果を要求されていたタイミングで,しっかりと結果を引き出せたというのは大きなことです。この点の評価は揺らぐものではありません。


 ありませんが,スカウティング,という部分では甘さを見せてしまったようにも感じます。


 立ち上がりからラッシュを仕掛けた,となれば,ターンオーヴァを受けてしまうと守備バランスを欠いた状態でカウンター・アタックへの守備応対を強いられることになります。そのときに,「強烈な個」をどのようにして抑え込むか。1on1ではなくて,どう囲い込むか,という感じでしょう。この部分で,約束事が必ずしも明確ではなかったように見えます。


 相手はビルドアップからリズムをつかむより,リトリートから縦に鋭く仕掛けていく,という戦術イメージでした。彼らの持つ戦力バランスを冷静に考えれば,あり得るオプションです。


 この有力なオプションに対して,どのような処方箋を準備するか。


 それほど長い間隔を置かず,彼らとは国立霞ヶ丘で対戦することになります。「強烈な個」の去就が取りざたされてはいますが,大まかなスタイルには変更はないでしょう。この対戦で得られた収穫,課題をクリアしてほしいと思っています。