揺れている08スペック。

ハンス・オフトの時代には,安定性を重視していました。


 セントラル・ミッドフィールドという言い方をするよりも,ツイン・アンカーなどという表現の方が相応しかったような印象です。


 その印象が変化してきたのが,2004シーズンです。


 ツイン・アンカーとも表現すべき,守備的安定性を狙ったコンビネーションから,守備面と同時に攻撃面においても機能させるべき重要なポジション,という位置付けへと変化していたわけです。


 もともと,守備面で要求される要素は,ハンス・オフトによって浸透しているはずです。その役割に加えて,攻撃面のオーガナイズであったり,サポートという役割が追加されていく。最終ラインからの攻撃参加を促し,同時に守備ブロックのマネージメントをする。あるいは,攻撃面でのサポートをするべく,積極的に攻め上がっていく。


2004シーズン以来,浦和の攻守を支えてきたのは,ディフェンシブ・ハーフを起点とする,縦の関係性であり,縦方向での流動性であるはずです。このことが,浦和にとって「戻るべき場所」ではないか,と思うのですが,柏戦でのスターターからは,2004シーズンから構築してきた発想が抜け落ちているかのような印象しか受けることができませんでした。


 ちょっと,前置きが長くなってしまいました。


 今回は,湯浅さんのコラム,と言うか提言をもとに書いていこうと思います。


 湯浅さんも,最後の部分で「中盤の底」のコンビの機能性が最も重要な要素,という指摘をしていますが,まったくの同感,というわけです。


 カウンター・アタックを仕掛けるとすれば,恐らくはボール奪取のポイントでしょう。また,リトリートからポゼッションを基盤とする仕掛けを意識するのであれば,最終ラインへと相手を追い込んでいく,ボール奪取のお膳立てという部分で重要な役割を担う,そんな位置です。いずれにしても,(強度は別として)プレッシングを安定して,しかも厳しく掛け与えていけなければ,浦和がどちらの仕掛けイメージを持っているとしても,そのイメージを描き出すのは難しいだろう,と思うのです。


 この部分で,柏戦でのスターター,彼らのパフォーマンスは残念ながらチームを支えるにはあまりに不安定でした。


 中盤の底,この部分の不安定性が守備ラインに影響を及ぼし,攻撃面ではサポートが薄くなる。ボールを受け渡した後に,そのまま縦へとポジションを変化させる動きが,中盤やアウトサイドで見られないのだから,“コンパクト”をそのままピッチへと表現すれば,ストッパーのさらに外側,そしてアウトサイドの背後に生じるスペースが「格好の標的」になってしまいます。


 チームがあるべき姿を取り戻す,あるいは原点に戻るのであれば,必要とあればハンス・オフトが徹底したように“ツイン・アンカー”,つまりはチーム全体での守備意識の徹底から再構築する必要も出てくるように思うのです。