「ホーム」と広域開催と。

今季は,ホームを大事にしながらも広域開催を,という印象です。


 広域開催,というと,どうしてもネガティブな意識を持ってしまいます。アソシエーション・フットボールの世界で,「特別活動地域」なんて言葉を見かけたからかも知れません。“ホームタウン”という意識を前面に押し出しながら,ホームタウンをむしろぼやけさせてしまうような結果を導いたように思うからです。


 ですが,このケースでの広域開催は,もうちょっとゆるく考えても良さそうです。ということで,今回は2008〜09シーズンの試合日程(トップリーグ・オフィシャル)が発表された,楕円球の話をひさびさに。


 やはり,「ご近所さん」であるワイルドナイツが気になるわけですけれども。


 2008〜09シーズンは昨季よりも,太田での開催が抑えられている印象です。ラグビーフットボールは1回戦総当たり制のリーグ戦ですから,必ずしもホーム・ゲームとアウェイ・ゲームの数字が一致するものではありません。また,フットボール的な“ホーム・ゲーム”(ホームタウンでの開催)ではなく,“ホーム扱い”というゲームもあります。


 その重大な例外が,昨季においてはワイルドナイツだったわけです。ホーム・ゲームを,極力本拠地の置かれている太田で,という意識を持っていたのでしょう。その方針が,来季はちょっと転換されるようだな,と思うわけです。むしろ,ヴェルブリッツジュビロの方が,ホームタウンでのゲーム開催は多いかも知れません。


 そこで,思い浮かんだのが「広域開催」という言葉だったわけです。


 ワイルドナイツが本拠地を置いているのは,太田市に隣接する大泉町です。その点で,太田での開催には不思議はありません。ですが,「群馬県」という単位で見た場合に,ラグビーフットボールという競技を広く認知してもらうには,敷島公園での開催も視野に入れておく必要がある,という判断も働いたのでしょう。そして,その判断にはザスパとの関係も関わっていたものと思います。また,クラブの歴史を紐解いてみれば,利根川を挟んだ反対側である熊谷市との関係も浅からぬものがあります。埼玉県においては,熊谷市は“ラグビー・タウン”という位置付けでもあります。


 というような,周辺事情も働いたかも知れません。ともかくも。


 ラグビーフットボールにおいても,“ホームタウン”という意識は重要な要素だろうと思っています。その先陣を切ってくれたのが,ワイルドナイツだったと思うところもあるのです。


 ラグビーフットボールという競技が持っている魅力,その魅力をこどもたちに,その親御さんたちに広めていくのは,トップ・レベルでのプレーをしている選手たち,あるいはそのトップ・レベルの選手たちをコーチしているコーチング・スタッフにとって,大きな意味を持っていると思うのです。企業活動という方向から見ても,ひとつのメセナ(社会貢献活動)として位置付けられるはずですし,間接的であるにせよCSRという見方ができるものでもあるはずです。ホームタウンという軸足が明確になり,そのうえに広域開催という意識が出てきたのであれば,緩やかにラグビーの裾野が広がっていくきっかけになるかも知れない,と思うところもあります。