対タイ戦(アジア3次予選・アウェイ)。

戦い方では方向性を感じさせつつ,現実主義的に得点を奪取する。


 本戦を現実的な射程に収めながら,同時に現実主義的な対応が求められるアジア予選に対応する,という意味で,この試合は一定程度においてシナリオ通りではないかな,と思います。


 いつものように(以下省略),のタイ戦(アウェイ)であります。


 現実主義的な得点奪取となれば,セットピースであります。


 先制点,そして追加点奪取の局面はいずれもCKを起点とするものでありました。先制点奪取の局面では,ファー・ポストからニアのサイドネットを狙って叩き付けるヘッダー,追加点奪取の局面ではほぼセンターのポジションから相手のマークを外し,フリーの状態からコントロールされたヘッダーによって,前半の段階で2得点を挙げる。


 さすがにリアリスティックだな,と思うのであります。


 リアリスティックではあるけれど,結果が厳しく求められるAマッチにおいては,内容面における優劣はそれほど大きな意味を持たないだろう,と思ってもいます。決めるべき局面において確実に得点を奪取することは,重要な前提だろう,と。


 そして,セットピースの背後にあった攻撃面ではある程度形が見えてきたな,と思います。


 アウトサイドの狭い地域で敢えて勝負を挑み,ボールを縦に進める。どちらかと言えば,岡田さんのアイディアと言うよりは大木さんのアイディアに近いものを感じる攻撃の姿だな,と思います。


 ちょっと,静的なパッケージを持ち出しますと。


 4バックのSBと,流動性を保持しながらアウトサイドへとポジショニングするオフェンシブ・ハーフとのコンビネーションによって,相手ボール・ホルダーをサイドへと追い込み,必要に応じてディフェンシブ・ハーフも含めてボール奪取を仕掛け,そこから狭いエリアでのパス・ワークから攻撃へと転換していく。一定程度,と留保したのは,このサイドとセンターとの連携がまだ熟成の初期段階と感じられる時間帯が多かったように思うからです。


 1トップであるならば,単独で仕掛けにかかると言うよりは,受けたパスを相手守備ブロックから隠し,再びボールを繰り出すような形が求められるはずです。そのときに,誰がボールを収めるのか(積極的に相手守備ブロックの背後へと飛び出していくのか),ちょっと不明確なままだったように思うのです。加えて言うならば,サイドでの勝負で数的優位を構築しているタイミングから,センターへと絞り込んでいくタイミングを狙っていかないと,センターでの分厚さが巧く作り出せなくなるし,ディフェンシブ・ハーフによる攻撃参加を促すとしても,チームが前掛かりになり過ぎるというリスクを背負うことにもなる。特に前半のパッケージで考えなければならないのは,オフェンシブ・ハーフが,どのタイミングでセンターに絞り,どのタイミングで相手ボール・ホルダーをサイドへと追い込んでいくのか,というポイントになるように思いますし,さらに煮詰めていく必要があるように感じられます。


 ・・・ともかくも。


 同じグループのもうひとつの試合結果によって,最終予選への進出が決定しております。まだ,局面ベースで見るならば熟成の余地を大きく残すチームではありますが,大枠に関する共通理解は進みつつあるな,と感じます。この試合では,相手が中盤でのボール奪取勝負に真正面から挑んできたことで,自分たちのリズムへと相手を引きずり込むことに成功しました。


 ただ,最終戦,あるいは最終予選において中盤でのボール奪取を回避して,ロングレンジ・パスを大きな基盤とした組み立てをしてくる可能性はゼロではありません。そのときに,どのような組み立てができるのか。


 この試合で徹底した,ボール・コントロールを失った直後からの積極的なプレッシングをどれだけ組織的に機能させることができるかが,リズムを引き寄せるための鍵になるだろうと感じます。そのために,(恐らく想定しているだろう)「本戦仕様」をどれだけ,(中東勢を中心とする)「アジア仕様」にモディファイできるか。そんなケース・スタディが,バーレーンを相手とする予選最終戦ではないか,と思いますし,この段階にまで「勝負」を持ち込まずによかった,と思うのです。