対オマーン戦(アジア3次予選)。

熟成途上という印象も受けますが。


 守備面で指向するフットボール・スタイルが明確に表現できた,というのは評価すべき部分でしょう。


 まいど1日遅れ,のオマーン戦であります。4連戦,と表現すべきアジア3次予選,その初戦であります。


 最も「現実主義」的に展開していかなければならない試合で,勝ち点3を奪取できたことは間違いなく収穫です。


 早い時間帯でセットピースから先制点を奪取,追加点は最後方からの攻撃参加とシンプルなパス・ワークから相手を崩す。ゲームを決定付ける追加点は,「個」のコンビネーションから生み出される。いいリズムの中で展開できたゲームです。また,守備面でいい形を作れているから攻撃面,特にその端緒がいい形で構築できているようにも感じます。さらに言えば,リスタートからの約束事は相当に徹底されている印象を受けます。


 とは言え,攻撃面ではまだ未整理の部分も感じられます。


 ビルドアップに関して,中盤での積極的なポジション・チェンジが攻撃を分厚くする(後方からの攻撃参加を促す)方向で機能している時間帯がまだ少なく感じます。


 ということで,ちょっとゲームを見てみますに。


 いわゆる数字で表現すれば,4−4−2。しかし,オマーン戦での戦術パッケージは4−5−1(4−2−3−1)に近い4−4−2と考えるべきではないか,と感じます。


 この戦術パッケージ,守備面から導かれたものでしょう。このゲームでは,高い位置からの積極的なファースト・ディフェンスが仕掛けられていました。高い位置から緩やかにボール・ホルダーを追い込み,ディフェンシブ・ハーフがさらにパス・コースを規制,最終ラインがシッカリと減衰された相手の攻撃を受け止めるという戦術イメージではなく,できるだけ高い位置で,ボール奪取までを明確に意識したディフェンスを「組織的に」仕掛ける。そのために,中盤での機能性を引き上げたい。


 恐らくはそんな意識が背景にあって,2トップとは言いながら実際には「縦方向」での2トップであり,しかもポジション・チェンジが積極的に仕掛けられているから,実質的には1トップと表現すべきパッケージだったように感じます。この戦術パッケージが,相手に守備応対面での混乱をもたらしたように見えます。2トップが水平方向の関係性を持っていれば,3バックによって物理的な数的優位を維持したままに守備応対をしていくことが可能になるけれど,縦方向に変化をしているパッケージに対して,誰がどのようにマークに付くか,明確になるまでに相当な時間を必要としたように見えます。


 また,中盤でのファースト・ディフェンスがスタイルとして不明確でもありました。守備ブロックへと追い込むような形でのプレッシングを仕掛けるわけでもなく,ボール奪取までを狙ったプレッシングを仕掛けていたわけでもない。そのために,ボール・ポゼッションを高めることができていたし,中盤で攻撃リズムを構築することができた。さらに,中途半端なポジショニングをしている最終ライン,その裏のスペースを狙うという形が作りやすくもあった。


 ただ,中盤のポジション・チェンジがまだ組織性を帯びるまでには至っていないようにも感じます。そのために,スペースを徹底して突くという攻撃が仕掛けられた局面が(相対的に,ですが。)少なかったように感じます。


 4を使っていると,どうしてもサイドにトラフィックを生じる時間帯が生まれてしまいます。このゲームでは,敢えてサイドでのトラフィックを生み出し,狭いスペースからSBがオーバーラップを仕掛けていく,というサインプレーも繰り出されていました。サイド,という部分ではトラフィックの問題はある程度抑え込まれつつある,と評価すべきかも知れません。


 センター方向でのトラフィックが生じた時間帯があったように思えるのです。


 パッケージを縦軸で捉えると,攻撃力を備えたCBであり,突破力を持ったディフェンシブ・ハーフが構えています。このゲームでは,明確にシングル・アンカーが置かれていると言うよりも,遠藤選手が相対的にアンカーとしての役割を大きく担っているけれど,長谷部選手も局面に応じてアンカー的な動きをしていました。彼らは,守備面だけでなく,攻撃面でのパフォーマンスも持っています。そのパフォーマンスを引き出す方向性でのポジション・チェンジはあまり積極的に繰り出せてはいなかった。彼らの攻撃参加を促す,という方向でのポジション・チェンジまでは戦術的な交通整理が行き着いていなかったように感じるのです。


 縦方向での攻撃圧力が高いチームに対しては,ディフェンシブ・ハーフのコンビネーションにも微調整が掛けられるかも知れません。そのときに,「戦術的に」縦方向でのポジション・チェンジを仕掛けることができると,さらに熟成が進むように感じます。


 ・・・とは言え。


 シビアな状況を想定すれば,戦術的な整理に関するプライオリティは,得点奪取へと直結させやすいセットピースから進むはずだし,バーレーン戦(アウェイ)を思えば守備面で戦術的な意識を徹底させることを最優先にするはずです。現実的な姿勢が明確に求められる予選にフォーカスするのであれば,チーム・ビルディングの過程に論理的なおかしさはありません。


 やっと,指揮官が意図を明確に押し出すようになり,その意図が浸透しはじめた。連戦を通じて,どこまでチームが,チーム戦術が熟成を深められるか,が問われるように思います。