対パラグアイ戦(キリンカップ2008)。

4と言うよりは,“3.5”でありましょう。


 同じアウトサイドでも,左右で位置付けが違うように見えます。


 左は攻撃面にウェイトを振り向け,かなり高い位置でのダブル・アウトサイドを意識したポジショニングだったように見えます。対して,右は守備面を意識したパッケージになっているようです。


 SBが適材適所だったか,と言えば,間違いなく逆だと思いますが,そうせざるを得なかったようにも見えるのです。


 右に流れながらゲームを構築する形が多い“ラストピース”を思えば,SBがオーバーラップを仕掛けるとしても中盤でトラフィックを引き起こしてしまい,かえって攻撃を減速させかねない,という判断もあったかも知れません。


 戦力的な重心となっている中盤をどのようにして攻撃へと結び付けるか,ということを考えれば,このゲームでのパッケージは論理的な印象もあります。ありますが,あくまでもこの印象は戦術パッケージを静的なものとして眺めれば,という条件付きです。動的なパッケージとして見れば,まだ戦術的なイメージが浸透しきっているとは言いがたい。仕掛けのビルドアップではなく,仕掛けの最終段階にどう絡むか,そのためのポジショニングをどう取るべきか,など曖昧な部分がいささか多い。


 可能性を感じるパッケージではあるけれど,熟成に向けたリードタイムが少ない。


 大きな懸念材料ではありますが,(ポジティブに捉えるならば)ブレを見せていた方向軸が固定できつつある。タイトル奪取ということよりも,時期的なことやチームの置かれた状況を冷静に考えるならば,こちらを収穫と考えるべきではなかろうかな,と思います。


 コートジボワール戦をサボって,いきなりのパラグアイ戦であります。でありますれば,2ゲームを通しての印象を書いておくことにします。


 まず,2試合を通してですが,収穫と課題が絡み合っているように感じます。


 コートジボワール戦では,先制点(決勝点)奪取という結果を得た。得たが,チームが有機的に機能した,という印象は時間帯限定のものでもあった。リズムを序盤で掌握しながら,なかば自分たちが手放したようにも感じるのです。


 このときの課題を大ざっぱに言うならば,“シングル・スピード”からどう脱するか,になるでしょう。


 ちょっと,バイク(自転車)のようなことを言いますと。


 ある程度の距離を持った公道でのタイム・トライアルなのに,ピストでのタイム・トライアルに使われるレーサーを持ち込んでしまったような違和感があるのです。


 ピストであろうと,ロードであろうとライバルを振り落とし,自分のリズムに持ち込むためには「駆け引き」が不可欠な要素です。言い方を換えるならば,緩急です。ピストでは(ロードとの比較において,ですが)短時間で駆け引きから仕掛けに入るけれど,ロードでは仕掛けまでに時間がかかる場合もあるし,フィニッシュ・ラインが迫っている局面で仕掛けるケースだってあります。


 緩急のリズムがまったく違う。


 そんな状況なのに,シングル・スピードのバイクを持ち出すのはいささかおかしい。不要な負荷を掛けてしまった,という時間帯があったように感じられるのです。


 逆に,パラグアイ戦です。


 前半だけに限って言うならば,リズムを手放したという感じはありません。むしろ,リズムを掌握していた時間帯が長いとも言える。


 ただ,仕掛けをチームとして加速させる,フィニッシュへと積極的に持ち込むという部分でイメージのズレを露呈した,とも言えます。ポゼッション,という要素から言えば,パラグアイ戦のパッケージが動的に機能し,フィニッシュへとシンプルに組み立てていく,という部分を考えれば,コートジボワール戦で採用した,コンベンショナルな4−4−2が機能した,という形になるでしょう。


 恐らく,予選に持ち込むパッケージはパラグアイ戦のパッケージを基盤としたものではないかな,と推理します。そのときの課題となるのは,(このゲームでもハッキリと提示されましたが)ポゼッションからどのようにして仕掛けを加速させるか(リズムを大幅に変化させることができるか),であるように思います。どこで,仕掛けの形をビルドアップからフィニッシュに向けたものへとギアチェンジするか。その高さが高ければ,相手に対する脅威になるはずだけれど,引く位置に抑え込まれてしまうと,逆にリスク要因になってしまう。


 対アジアを考えれば,どうしても攻撃面を意識せざるを得ません。アジアカップなどでも表面化していますが,引いて構える相手をどのように崩すか,です。


 相手は,ワンチャンスを狙った戦術を徹底してくる。ならば,カウンターの起点を提供するような中途半端な仕掛けは徹底的に回避しなければなりません。仕掛けたからには,フィニッシュにまで持っていく。そう考えれば,なおさらに攻撃ユニット,特に前線と中盤との距離感が鍵となるはずです。何があっても仕掛けを加速させるべき時間帯には,コートジボワール戦のような“縦にシンプルな”仕掛けイメージが意味を持つかも知れないな,とも思います。


 ただ,相手を消耗させ,相手のポジションを崩していくという部分からも,ポゼッションを基盤とする仕掛けが意味を持つのも確かでしょう。スタートは,恐らくパラグアイ戦のパッケージに近いものになるのではないか,と思います。


 予選を目前に控えた段階ですから,すべてを引き出すような戦い方は恐らくしていないでしょう。


 それでも,パラグアイ戦の前半は(コンディションが上がりきっていない選手を起用したりという部分はあるとしても)現任指揮官が現状でイメージするフットボールを表現する,その基盤なのだろう,と感じます。あとは,この基盤が有機的に機能するように「イメージ」をどれだけ束ね上げられるか。チームとして100%戦える態勢を整えるためには,重い意味を持つ“インターバル”になりそうです。