From Russia with Triumph(欧州カップ戦).

バークレイズ・プレミアシップで鎬を削ってきている相手。


 スカウティングにしても,リーガ・エスパニョーラセリエAに対するスカウティングとは比較にならない緻密さを持たせられる関係です。


 となれば,難しい決勝戦となるのはある程度想定できるところです。ですが,勝負はペナルティ・シュートアウトに持ち込まれます。しかも5人の選手では勝負が決まらず,サドンデスにまでもつれ込む。
 ペナルティ・シュートアウトの記録も当然,“6−5”という数字が残ります。ですが,120分の戦いで示されるのは“1−1”というファイナル・スコア。このスコアから感じられる以上にアーティスティックであり,でもフットボールが持っている厳しい勝負の側面を存分に感じることのできる試合だったように感じます。



 ミュンヘンの悲劇から50年。重要な節目で,欧州最高峰へ駆け上がる。


 「悲劇」と呼ぶ以外にないこの航空機事故には,リーグとの協力体制が敷けず,「強行突破」的に欧州カップ戦に参戦,強行日程をクリアしなければならない,という背景がありました。
 ビッグイヤーを奪取するために強行日程をクリアしようとして,多大な犠牲を払った。ビッグイヤー奪取を早い時期から望んできたのですが,意外にもビッグイヤーをそれほど多く掲げてきたわけではありません。


 意外にも欧州でのプレゼンスは弱かったのです。


 この決勝戦においても,ともすればビッグイヤーが掌中から滑り落ちるのでは,という可能性はありました。
 26分,打点が猛烈に高い鮮やかなヘッダーから先制点を奪取するものの,前半終了間際の時間帯,エシエンが放ったシュート,そのリフレクションをランパードに押し込まれ,ゲームをイーブンに引き戻されます。


 はじめてビッグイヤーに手を掛けられる位置にまで駆け上がってきたわけですから,そのモチベーションは相当に高かったはず。ハーフタイムから90分のタイムアップ,そして延長戦へと緊張したゲームが続いたのは道理,かも知れません。


 ゲームの帰趨は雨中のペナルティ・シュートアウトへと持ち込まれます。


 9シーズン前,バイエルン・ミュンヘンとの決勝戦では「カンプ・ノウの奇跡」とも評される鮮やかな逆転劇を演じ,1967〜68シーズン以来のビッグイヤー奪取に成功するわけですが,この決勝戦にも雨中の激闘,という意味でのドラマが待っていました。
 マンチェスター・ユナイテッドと欧州カップ戦というものには,意味合いはそれぞれに違うとしても何らかのドラマがついて回る,のかも知れません。