対G大阪戦(08−13)。

戦力的な部分と,戦術的な部分で「足らざるもの」がやはりある。


 浦和は,“カウンター・アタック”を主戦兵器としてきた時期が長いのですが,緩やかに,でも確実に仕掛けの形がカウンターからポゼッションを背景とする仕掛けへと変化を見せてきているように受け取れます。
 ただ,いまのパッケージを冷静に考えると,ポゼッションを基盤とする仕掛けを繰り出すとしても,フィニッシュの段階で仕掛けが崩れてしまう。トップは自らが仕掛けて決定機を引き寄せる,と言うよりは,コンビネーションからリズムの変化を利用して決定機を生み出す形にフィットしているように見えます。
 ならば,アタッキング・サードでどのようにしてリズム・チェンジを仕掛けるか。単独突破からのリズム・チェンジではなく,コンビネーションからのリズム・チェンジを。


 ここで,足らざるものをどうクリアするか,が問われるように思うのです。


 いつものように1日遅れなのですが,いつもとは違って冷静に考えをまとめるのにいささか時間が掛かってしまっています。ともかく,このエントリではゲームに集中して見ていくことにします。


 まず,大ざっぱに。


 結果は伴わなかったものの,それほど悪いゲームだとは思いません。ただ,勝ち点が奪えないからには,理由があるのは間違いないことでもあります。そこで,理由を考えていくことにします。
 まず考えられるのは,守備面で集中が途切れる時間帯が生じたこと,でしょう。
 先制点を奪取された局面は,CKが起点になっています。そのときに,シューターへのマーキングが外れてしまっていました。プレッシャーを掛け与えられた状態ではありませんから,シューターは単純にボールへと合わせるという形のヘッダーではなく,ボールをピッチへと叩き付け,バウンドを利用したヘッダーを許してしまいます。立ち上がりから,積極的にリズムを掌握しようという姿勢が見えていただけに,嫌な形で主導権を掌握された形です。
 それでも,攻撃面が減退することはなかったのですが,最終的なフィニッシュの部分で安定感を欠いているために,なかなかゲームをイーブンへと引き戻せないで時間が経過します。


 そして,前半終了間際の時間帯に,追加点を奪取されます。
 コーナーフラッグ手前のエリアからのクイック・リスタートに,チームが反応しきれなかった結果,です。ボール・ホルダーをゴール・ライン近くのエリアから,タッチラインへと追い込んでいった選手が対応しきれなかったのはある意味で仕方ないとしても,マーカーへの意識が落ちてしまったことで,守備ブロックの足が止まってしまう。


 結果,前半終了時で2点のビハインドを背負うことになります。


 後半立ち上がりの時間帯,FKを直接ゴールマウスへと沈めることでこのビハインドを1点へと引き戻すのですが,その後に相手が仕掛けた戦術交代から,決定的な追加点を奪取されます。このときも,クイック・リスタートに対する対応が決定的に遅れている。
 そして,中盤が相手の仕掛けを効果的に抑え込む,というバッファとしての機能が落ち込んでしまっている局面が今節は見られました。相手の仕掛けを抑え込み,最終ラインに追い込んでいくようなディフェンスを仕掛けられる時間帯が少なく,最終ラインが相手の仕掛けを真正面から受け止めざるを得ないような形を作ってしまった。守備ブロック,というには,ブロックが本来表現していいはずの機能を持っていなかったようにも映るのです。


 ・・・この日のゲームは,浦和にとって「足らざるもの」を明確に意識せざるを得ないものだったように思います。


 確かに,主導権を掌握していた時間帯は多くあったように感じます。ですが,主導権を掌握していたとしても,フィニッシュにまで持ち込めなければ,そしてフィニッシュに正確性を持たせられなければ意味がないとも思います。フットボールは採点競技ではないのですから。
 この点で,仕掛けを加速させる,あるいはリズムを変化させる役割の選手が欠けている,という事実を再び突き付けられたように感じますし,前線をより高い位置でプレーさせる,という部分にも関わることですが,“バランサー”ではなく,“リンクマン”としてのディフェンシブ・ハーフが欠けている,ということも再認識させられるゲームだったのも確かであるように感じます。


 08スペックの前線は,ボールを引き出すためにポジションをいったん下げ,そこから加速させると言うよりは,可能な限りボックス近くにポジショニングさせる時間帯を増やし,加速力よりもパスのタイミングを織り交ぜたリズム・チェンジで相手守備ブロックを崩しに掛かる特徴(と言いますか,仕掛けの個性)を持っているように受け取れます。その個性を,まだ現状のチームは生かし切れていないように映るのです。


 「足らざるもの」をどのように,チームとして埋めていくか。埋めきれないならば,移籍ウィンドウが開いた時点で何らかのアクションを仕掛ける必要性も間違いなくあるはずです。