対神戸戦(08−10A)。

確かに,難しい時間帯だったかも知れません。


 65分という時間に仕掛けた戦術交代は,「仕掛けを強めていく」というメッセージであるはずです。先制点を奪取したのは,この戦術交代から約5分後のことです。


 ピッチへのメッセージが,具体的な結果として表現されます。ただ,このあとのメッセージは微妙に遅れたようにも感じます。


 少なくとも,仕掛けを強める姿勢は緩めていなかったように受け取れます。結果として,前半には生じなかった隙を生じさせ,その隙を相手に突かれてしまう。攻撃面とリスク・マネージメントが巧くバランスできなかった時間帯が生まれてしまったのは,戦術交代というオプション,そのオプションを使っていく時間帯を含めて,課題になるでしょう。


 まいど(以下省略),の神戸戦であります。


 90分プラス,という時間を全体として眺めてみれば,恐らくゲームプランを一定程度表現できていた時間帯が多かっただろう,と感じます。


 ただ,ゲームプランが微妙にズレを生じた時間帯も確かにあります。


 ちょっと,ゲームプランという視点でゲームを振り返ってみようと思います。


 まず,前半であります。


 ここ数節,いささか攻守にわたるスロー・スタートが目立っていましたが,今節は守備的な安定性を意識するところから立ち上がっていく,という意識を徹底していたように感じます。


 攻撃面を考えるならば,前線を孤立させないためにアウトサイド,またディフェンシブ・ハーフが積極的に前線をバックアップし,距離感を縮めていく必要があるのは確かです。攻撃面での積極性を,前半においても感じることはできましたが,距離感という部分ではまだ前線と中盤,アウトサイドがコンビネーションを繰り出せるだけの距離感には入り込めていなかったようにも感じます。


 ただ,神戸の攻撃はスペースを積極的に狙っていく形でもあります。この要素を考えるならば,前半の展開はあり得る形,でありましょう。チームがコンパクトネスを維持できなくなってくる時間帯,あるいは前掛かりになってくる時間帯を狙って,カウンター・アタックを仕掛ける,という意識を強く持っていたようにも受け取れます。実際,ピッチサイズを最大限に生かした仕掛けを繰り出すタイミングでは,守備応対面で難しさを作り出されたり,クロスバーに助けられるような局面もありました。そんな状況を最大限抑え込む,という戦術意図があってのことでしょうが,アウトサイドは攻撃的なポジショニングというよりも,守備的な方向に意識を振り向けたポジショニングを取っていたように受け取れました。


 また今節,特に前半にあってはファースト・ディフェンスの段階で相手の仕掛けをかなり減速させることができていたように思います。


 仕掛けを効果的にスロー・ダウンさせることができていたために,ボール奪取という部分で余裕を持った応対が可能になっていた。


 ハーフタイムの段階でスコアレス。先制点を奪取してリズムを掌握する,という形には持ち込めてはいなかったものの,ゲームをコントロールするという部分では一定程度の収穫があったものと思います。


 対して後半は,神戸が仕掛けを強めてきます。52分の戦術交代によって,戦術的なパッケージを微妙に変化させ,そのパッケージへの対応で後手を踏む時間帯が増えてきた,という印象です。


 この状況に対して,コーチング・スタッフがピッチへ向けたメッセージは,「仕掛けを強める」というものでした。そして,前線と中盤,アウトサイドとの距離感を縮めにかかる。先制点奪取はセットプレーからのものでしたが,その前段階でのボールの流動性は,確かに上がったようにも受け取れます。


 ただし,この後の対応では戦術的なピクチャーが微妙なズレを生じたのも確かでしょうし,仕掛けを強めることで結果的に,神戸がストロング・ポイントとする仕掛けの形に嵌り込んだように思います。

 アウトサイドの構成が,SB−サイド・ハーフという関係性ではなく,SB−ウィンガー(アウトサイドに大きく張り出したトップ,という見方でもいいかも知れません。)という形に変更されています。最終ラインから見れば数的同数ですし,アウトサイドの裏を突かれやすい形でもある。その形を,作り出してしまったわけです。


 ・・・確かに微妙な時間帯でありました。


 明確にクローズを意識すべき時間帯でもないし,攻撃的な姿勢を緩めるという選択肢は取りづらい。とは言え,前半に強く意識していた部分を,時間帯限定であるにせよ意識から落としてしまったことも確かです。ウェイト・バランスが,相手のストロング・ポイントを抑え込むのではなく,自分たちのストロング・ポイントを押し出す方向に傾きすぎたようにも見えます。


 幸運を考えるならば,勝ち点3奪取を逃し,勝ち点1を確保するにとどまったとしても妥当な結果と見るべきかも知れません。それよりも,ゲーム・マネージメントという部分で重要なレッスンを受けたゲームと位置付けるべきなのかも知れない,と思います。