Last Ticket to Moscow(欧州カップ戦).

複雑な感情を持っていたひとも多いのではないかな,と。<


 理性で言えば,あるいはフットボール・フリークとして冷静に見れば,イングランド勢が決勝戦への指定席切符を独占したのは誇らしく感じるかも知れません。しかし,最初にモスクワ行きのチケットを奪い取ったユナイテッドは,ネイションワイドなクラブではあるけれど,同時に“ユナイテッドだけには・・・”と思っているひともまたかなり多い。自ら追いかけているクラブがあれば,なおのことでしょう。


 彼らは,恐らくバルサに思い入れてゲームを見ていたでしょう。となると,もうひとつの準決勝も同じような図式で読み解きたくなるところです。


 ひさびさに欧州ネタ,でありまして,スポーツナビさんのニュース記事をもとにしていこう,と。


 もうひとつの準決勝。


 結果論,ではありますが,初戦がすべてだったかも知れませんね。第1戦,第2戦という形にはなっていますが,実際には90分ハーフのゲームを戦っているようなものです。そのハーフタイム突入直前に,オウンゴールによってチェルシーに大きな贈り物をしてしまう。リズム,というだけの問題ではなく,チェルシー・サイドのメンタルに大きな影響を与えたのではないか,と感じます。


 90分ハーフの後半を本拠地であるスタンフォード・ブリッジで戦えるのみならず,アウェイ・ゴールを奪取したことで戦い方の選択肢が広がっています。それでも,リヴァプールは“カップ戦巧者”としての姿を(一時的であるにせよ)見せることには成功するのですが,やはりゲーム全体の流れはチェルシーに傾いていた。モスクワへの指定席切符を最後に奪取したのは,ウェスト・ロンドンのクラブとなったわけです。


 さて,すでに決勝戦へ駒を進めているユナイテッド,彼らを追い掛けているひとから見れば,対戦相手はリヴァプールの方がよかったのかも知れないな,と思いますね。


 欧州カップ戦に限定して言うならば,マンチェスター・ユナイテッドリヴァプールの後塵を拝しているのです。サー・マット・バスビーがファースト・チームを率いていた時代にビッグイヤーを奪取すると,再びカップを掲げるまでに相当な時間を必要としているのです。その間,欧州でのプレゼンスを我がものとしていたのは,リヴァプールです。


 彼らと決勝戦で対決し,真正面からカップを奪い取りたい。そんな意識が働いていたとしても,不思議はないかな,と思うのです。


 しかし,リヴァプールの敗退によって溜飲を下げているひとたちも間違いなくいるはずです。特にアンフィールドからほど近く,グディソン・パークに足を運んでいるひとたちです。彼らは,チェルシーに思い入れてゲームを眺めていたに違いない。


 アウトサイドから見れば,イングランド勢が決勝戦を独占したことに着目もするでしょう。スポーツ・メディアもそんな伝え方をします。ですが,実際にクラブを追いかけているひとからすれば,それほど事は単純であるはずもない。フットボール・フリークとしての視線に,どうしてもフェイバリットを持ち,特定のクラブを追い掛けているがゆえの意識が働くはずです。そういう複雑さも含めて,フットボールが日常に根ざしていると言えるのかも知れないな,と思うのです。