3dr typeR.

もともと,ホンダはこのカテゴリが得意分野だったはずです。


 ワンメイク・レースのベース車両だったり,グループA車両にも使われていましたし。公道上でも,レース・トラックを走るかのようなライド・ハイトへと低められ,甲高いエグゾーストを響かせるクルマがいたな,という記憶があります。


 ですが,微妙に日本市場での風向きが変わってきたのかな,と思ったのは,JTCCが始まった頃でしょうか。FIAクラス2規定を導入したために,レース車両が4ドアセダンであることが求められます。そのときに,ベース車両としてホンダが選択したのは,シビック・フェリオ。“シビック”という名前にこだわったのでしょうし,グループA車両で培った技術要素を引き継ぎたいという意識もあったでしょう。しかし,戦闘力が想定よりもかなり低かった。グループAマシンに要求されるボディ剛性とは比較にならないほど,クラス2マシンに求められる剛性は高かったのだそうです。また,サスペンション・ジオメトリーが速いマシンをつくるにあたって,大きな鍵を握っていたのだとか。そのために,ホンダはアコードの投入に踏み切ります。加えて,プライベティアに対する技術協力ではなく,実質的なワークス体制へと移行し,開発スピードを引き上げたことで,JTCCを席巻することになります。


 思えば,シビック(特に,3ドアHBモデル)がレーシング・フィールドの表舞台から姿を消し始めたのはこの時期になるでしょう。


 同時に,公道上でも存在感が薄くなっていく。いまでは,シビックは“Dセグメント”に相当する,なかなかにジャスト・サイズなセダンだけがリリースされています。


 しかし,UKでは相変わらず3ドアHBが人気だとか。ということで,今回はフットボールを離れて,ホットハッチの話など。



 たとえば,UKの書店で自動車雑誌を手に取るとします。クルマが横を向いている(派手なテール・スライドを演じている)写真が掲載されていない雑誌を探す方が難しいのではないかな,と思います。


 意外な印象を持つひともおられるでしょうが,UKのひとたちは比較的スポーティなライドを持ったクルマを好みます。A級国道にしても,場所によっては道幅がかなり狭く,しかも屈曲路が圧倒的に多い土地柄です。クルマの運転が好きなひとならば,自然とドライブのペースが上がってしまうような,快適なワインディングが多いところです。となれば,トルクで押し切るような特性よりも,パワーを絞り出すことのできる特性を持ったエンジンに,そのエンジン性能を生かすことのできるミッションをほしくなるところでしょう。加えて,信号を設置する代わりに交差点にある“ラウンドアバウト(ロータリー)”によって,日常的に定常円旋回をしているわけですから,アンダーステア傾向の強いクルマは「曲がらない」と思われてしまう。スッとラウンドアバウトを抜けられるクルマの方がいい,と。


 ごく大ざっぱに言えば,ニュートラル・ステアに近い操縦特性を持ったクルマが好みなのではなくて,道がそういう特性のクルマを選ばせているようなものです。


 であれば,日本では出番の少なくなったホットハッチも出番が多い。“typeR”は高回転型のVTECを搭載していますから,お誂え向きでしょう。パッケージの部分から見ても,意外と合理的ですし,便利です。


 日本導入は白紙,なんて言われている3ドアHBですが,個人的には先代モデルのように「逆輸入」でもいいので,復活を望みたいところですね。