対大宮戦(08−07)。

「妥当な結果」というよりも「幸運な結果」としてのスコアレス・ドロー。


 お互いに,チームの持ち味を真正面からぶつけることができていたならば,妥当という言葉も使いようがあります。ありますが,一方的に持ち味を表現され,その持ち味を受け止めざるを得なかったのですから,より細かく言うのであれば,勝ち点2を幸運にも相手から奪い取ることができ,かつ勝ち点1を積み上げられたことを最大の収穫とせざるを得ないゲームだった,と感じます。


 “Derby Match”であります。


 チャンピオンシップ・ポイントを争ううえで,勝ち点3以上の意味を持つゲームも確かにありますが,そういう「理」を超えて勝ち点3を奪取することに意味のあるゲーム,でありました。ありましたが,であります。


 まいど1日遅れでありますが,いつも以上にまとまりを欠いております。


 今節の戦術パッケージは,3−4−1−2。


 特徴的な部分を挙げていきますと。それまでと同じ3トップ,と表現することもできますが,実際にはトップの関係性を2トップに近いものとして位置付け,シャドーを後方に配置するという逆三角形がイニシャルだったのではないかな,と思います。次に,啓太選手の離脱に伴って,ディフェンシブ・ハーフと最終ラインの構成が変更を受けています。また,アウトサイドとトップにも変更がかかっています。


 この変更が,戦術を表現するうえで大きな影響を与えたとは思いにくいのですが,ごく大ざっぱに言ってしまえば,攻守両面において課題がまだ整理されていないような印象を受けます。


 では,守備的な部分から。


 プレッシングが組織として機能していないのみならず,ファースト・ディフェンスに入るときのプレッシングが機能しない,という印象が強い。ボール・ホルダーに対して距離は詰めていくものの,コースを潰すようなプレッシャーが掛けられているわけではなく,結果としてボール・ホルダーをフリーに近い状態にしてしまっている時間帯が多い。そのために,ミッドフィールドでボール・ホルダーを追い込む,あるいはボール・ホルダーからパスの選択肢を奪い取るような形での守備がなかなか機能せず,ミッドフィールドをかなり自由な状態で使われる局面がかなりあったような印象です。


 ミッドフィールドで相手の攻撃を減速できていないのだから,最終ラインがしっかりと高い位置で相手の攻撃を抑え込む,という形は作ることができず,どうしても引いた位置からのディフェンス,という方向に傾いてしまう。チームをコンパクトに維持する,という部分で完璧な悪循環に嵌ってしまったのが今節,という印象です。


 加えて言うならば,ボール奪取に関して明確な意図が表現できていないような印象を受けています。


 戦術的なイメージが固定されていない,と言うよりも,「最終ラインで受け止める」という要素だけが浮き上がってしまっているように見えます。最終ラインをボール奪取位置としてもいいのだけれど,「意図して」その網に相手を掛けるのであれば,明確な意図を持って相手を網に追い込んでいく必要があるはずです。前線やアウトサイドが追い込んだあとに,ディフェンシブ・ハーフがさらに追い込み,最終ラインとのコンビネーションからボールを奪う,という流れが作り出せていない。


 意図したボール奪取が表現できていないのだから,攻撃面においても意図が表現できないのはある意味,当然のことでしょう。攻撃の端緒となるポイントが大幅に上下動してしまうのですから,攻撃の組み立ても引きずられるように不安定なものになってしまう。


 さらに,距離感が「過去のイメージ」から脱却できていないように見えます。


 前線のタレントが大幅に変更を受けているのですから,仕掛けのバックアップに関しても必然的に変化があるべきなのですが,ビルドアップに関する変化はそれほど感じることができません。むしろ,トライアングルに流動性が感じられない時間帯が多いために,相手の守備組織をコンビネーションから揺さぶっていく,という形が表現できない。となれば,攻撃ユニットだけがチームから浮き上がってしまう時間帯が増えてしまう。


 相手は以前からスペースを物理的に潰す戦術パッケージを採用して,ボール・ホルダーに対する数的優位をできる限り早く構築する,という守備イメージを徹底していました。その守備網を揺さぶるのであれば,リスキーなパスを選択する前段階としてスペースを引き出すような動きをレシーバ,そしてパスを繰り出す側が仕掛けてほしい。その動きが,全体として不足していたように感じます。


 ・・・「奇策」で結果を引き出してはきましたが。


 「奇策」ではなく,「正攻法」を意識すべき時期でしょう。「奇策」の中心にあったアイディアは,ボールの流動性を確保することだったはずです。本来,ディフェンシブ・ハーフではない選手をミッドフィールドに置かなければ流動性が確保できない,のではなく,奇策でチームが機能したことを通じて「何が必要(不足)か」をディフェンシブ・ハーフとしての適性が高い選手たちに読み取らせることが求められるはずです。そういう意味で言うならば,「奇策」の有効期間を経過した,という見方も成り立つかも知れません。


 機動性という部分で問題を抱え,ボールを保持した直後に相手からボールを隠す動きが決してスムーズとは言えない。また,相手を追い込みながらボールを奪取すると言うよりも,ボール・ホルダーを抑え込むような形でボールを奪いに行くタイプの選手なのですから,攻撃面での機能が低下すれば,守備面で表面化するネガティブが相対的に明確なものとなってしまうのは,ある意味必然でしょう。


 奇策はそのままウィーク・ポイントへと変化してしまうことにもなります。


 「奇策」で得られた要素を,「正攻法」で表現できること。チーム内での「化学変化」が不可欠な要素であるはずです。「形」を取り戻すと言うよりも,新たに「形」を作り上げていく必要性に迫られている,と思うのです。ボール奪取に対するイメージをまとめ上げ,仕掛けに対しても「組織」で崩すことを強く意識付けていかないと,本当の意味で戦力を生かし切るまでには行き着かないかも知れません。


 徹底的にコーチング・スタッフ,選手が話し合ってほしいと思います。