対アンゴラ戦(U23・国際親善試合)。

ゲーム・マネージメントは継続的な課題,でしょうか。


 ただ,テスト・セッションでファイナル・スコアを必要以上に問題視する必要性もないかな,とも思います。むしろ,相変わらず粗削りではあるけれど,“ムービング・フットボール”の香りが強く残っていること,チームの方向性が高い機動性を基盤に置く組織的なフットボール,という要素においてブレがないことが,収穫ではないかな,と感じます。


 前任指揮官時代のフル代表と直接的な比較ができていた時期には,いささか不完全な印象を与えていたように記憶しているのですが,いまとなっては「継続性」を強く感じる。それだけ,フル代表から機動性が失われているのかも知れません。


 例によって,の1日遅れなアンゴラ戦です。


 表面的に見るならば,「時期に遅れたテスト・セッション」のように映ります。


 タイミングを考えるならば,戦力的な基盤を広げるのではなく,むしろある程度絞り込みながら共通の戦術的なイメージを熟成させていく時期,のようにも考えられるからです。


 ただ同時に,年代別代表は単純に「実績」だけを考慮するわけにはいかないようにも感じるところがあります。もともと持っている潜在能力が,リーグ戦のスターターとして使われることで引き出されたり,実際に表現できているパフォーマンスがさらに高まっていくことがあるように思うのです。であるならば,戦術的な部分では一定程度のリスクは背負うのかも知れませんが,テスト・セッションを設定することにも意味があるように感じられます。


 さて,このゲームでの戦術パッケージは3−5−2。


 前半は,ちょっとコンパクトネスを維持できない局面が多かったように思いますけれど,「縦」への意識はかなりしっかりと持っていたように感じます。


 ただし。指揮官の描いている戦術イメージが100%選手に伝わっているか,というとちょっと疑問もあるかな,と。ビルディング・アップの段階では組織性を感じることもできるのだけれど,相手守備ブロックにクラックを作り出す,あるいはクラックを突く,というタイミングでさらなる組織性を感じたいのですが,なかなかこの段階までの組織性が作り出しにくい。当然,仕掛けやフィニッシュの段階では「個」が大きな意味を持つし,個を徹底的に生かす形に持ち込まないといけないのですが,その「個」を生かし切るためには前段階で組織的な揺さぶりを掛けてやりたい。仕掛けの選択肢を広げていくためにも,どのように攻撃ユニットをバックアップしていけるか,を意識付けられるといい。


 ・・・前任指揮官が積極的にフル代表で意識付けようとしていたのは,この部分だったはずですし,その予備段階を徹底していたのがアジアカップだったように感じられます。この基盤が,消えかかっているのは確かですね。


 勝負の姿勢は大事なのだけれど,やり過ぎたかも知れませんね。


 話戻しますと。


 予選を戦ってきた戦術パッケージにあっても,組織的に攻撃リズムに変化を与えるという部分ではいささか粗削りな部分,といいますか,戦術的なイメージの熟成不足を感じさせるところがありました。それだけに,(逆説的な言い方になるかも知れませんが)チームの基盤を広げるにはいいタイミングなのかも知れませんし,アンゴラ戦での収穫は大きかったのではないか,と感じます。


 コーチング・スタッフにとっては,戦術的なイメージをどれだけシンプルにチームへと落とし込むことができるか,そのスキルが問われることになるでしょうし,選手サイドから見れば,コーチング・スタッフから提示された戦術的なイメージをどれだけ短い時間でピッチに表現できるか,という部分での戦術理解度が問われることになる。ポテンシャル,という部分で言うならば,実際にピッチに表現できるパフォーマンスのみならず,戦術理解度という部分においてもリーグ戦を戦うことで「化学変化」を起こす選手は間違いなくいるはずです。また,アンゴラ戦を転換点としてポテンシャルがパフォーマンスへと結び付きはじめた選手もいるはずです。


 本戦に向けてどのようなパッケージングとなるのか。


 登録枠という拘束条件がありますから,ポリヴァレンスを無視するわけにはいかないけれど,チームとしての機能性を高めるためには落とせない選手が間違いなくいる。そんな存在が育ってきているかを含め,興味あるところです。