対神戸戦(グループリーグ第1節)。

ストロング・ポイント再構築への可能性と,ウィーク・ポイントと。



 その双方がピッチに表われていたような印象があります。

 可能性をどこまで高めていけるのか。

 チームに求められていることは,シンプルだと思います。



 ヤマザキナビスコカップ,予選リーグ第1節であります。



 まずは,ウィーク・ポイントから。



 ゲームへの入り方が,いささかフワッとし過ぎていたように思います。

 自分たちが積極的に仕掛けることで,主導権を掌握しようとする意図を感じなかっただけでなく,どうも相手の展開するフットボールに合わせてしまった時間帯が立ち上がりからあったように感じられます。

 そのために,相手の仕掛けを受け止めるところからゲームに入らざるを得なくなります。このゲームにおいても,相手に合わせた入り方だったように感じられます。



 また,最終ラインが低い位置にある時間帯が多かったのに対して,相手はかなり高い位置から積極的にプレッシャーを掛けていく,という戦術的なイメージを徹底していたように感じられます。



 この相手の鋭いフォア・チェックに対して,ボール離れの悪さが目に付きました。



 表面的には,ボール・ホルダーに対する問題なのですが,実際にはパスを引き出すための動きがまだズレをみせている,ということなのでしょう。

 たとえば,最終ラインがボールを保持しているときに,どのようなフィードを攻撃の起点として位置付けるか,という部分で戦術的なイメージがパスを繰り出す側,そしてパスを受ける側で必ずしも同じではないように受け取れます。

 そのために,パスを受けるべき選手も確信を持って動き出せていないし,パスを繰り出す選手も明確なイメージを持ってフィードできないから,どうしてもボールを保持し,ポジショニングを実際に確認しながらパス・コースを選択するという時間的なディレイを生んでしまう。



 そのディレイを,神戸サイドに狙われていたな,と感じます。



 先制点を奪取された局面は,必ずしもこの図式に当てはまるものではない,とは感じますが,失点には直結しなかったものの「脅威」を作り出されてしまったという部分で見逃せない。修正を要するポイントだろう,と感じます。



 対して,可能性を感じる部分です。



 さすがに現段階では,「時間帯限定」でしかないものの,シンプルなパス・ワークと縦への速さが組み合わされた仕掛けが見られたこと,です。ディフェンシブ・ハーフとアウトサイド,そしてシャドーの関係性がしっかりとかみ合った印象があります。

 前半立ち上がりは,相手のリズムに乗せられていたけれど,14〜15分での仕掛けは,間違いなくチームが増幅すべき仕掛けのイメージだったと感じます。

 今節対戦した神戸のように,コレクティブな守備を展開してくるクラブに対しては,「個」を押し出した仕掛けだけでなく,コンビネーションからの仕掛けが重要な要素になるはずです。そのコンビネーションの原型は,前半15分の仕掛けだろう,と思うわけです。



 ただし,フィニッシュに持ち込む段階での「数的優位」はなかなか作り出せなかった。

 今節から,3トップ(と言うか,流動的な1トップ2シャドー体制と言うか)を採用しているのだけれど,3トップの関係性をまだ整理し切れていないように感じます。トップにボールが収まったとしても,ボール・ホルダーとの距離感がまだ適切な状態に持ち込めていないために,そこから仕掛けを加速させるという形はなかなか作れませんでした。逆に,相手守備ブロックに抑え込まれる局面が多かった。

 また,周囲のサポートに対する確信が深まりきっていないからか,縦方向での積極的なポジション・ブレイクが仕掛けきれないために,フィニッシュ段階での分厚さがまだ薄い。ディフェンシブ・ハーフが縦へのポジション・ブレイクから得点機を演出した局面がありましたが,そのような形をもっと意図的に仕掛けていってほしいと思います。



 ・・・ファイナル・スコアであったり,「勝ち点」であったり。

 数字,という部分では今季結果を出せていない。



 このことは間違いないところですし,結果という部分ではパッケージが「摩耗」してしまった昨季終盤から引き出せていないという見方もできます。

 できますが,昨季の戦術パッケージからの再構築を図り,「組織性」を戦術的な要素として確実に落とし込む,あるいは浦和としての「仕掛けの型」を作り直す,そのきっかけはつかめたのではないか,と感じます。



 セッティングの基本的な方向性すらが見失われたかのような状態から,リセッティングの方向性を示唆する要素が限定的であるにせよ見出すことができたゲーム。そのような印象を持っています。