48年目の戴冠(ラグビー日本選手権)。

相手に主導権を握られる前に,自分たちから仕掛けていく。


 そんな姿勢が,見られました。


 それでも,理由なき不安感がなかなか拭えなかったのは確かです。


 前半終了を告げるホーンが響いたときには,得点差は6。1トライ1コンバージョンで逆転可能な,「射程距離」でしかなかったのですから。


 ですが,彼らはゲームの主導権を譲り渡すようなことはありませんでした。後半,再び築いたリードを詰められてなお,さらに突き放してみせた。見事に,秩父宮賜杯を引き寄せたわけです。


 創部48年目にして,初めてのメジャー・タイトル奪取であります。ラグビー日本選手権であります。


 まずは,ゲームの話ではなく,三洋電機ワイルドナイツ(と言うよりは,かつての名称である「三洋電機ラグビー部」の方が相応しいでしょうか。)の話から。


 実際には,もっと早い時期にタイトル奪取をできるだけのポテンシャルをもっていたと思っています。トップリーグ参入時からの愛称である,“ワイルドナイツ(野武士軍団)”は,彼らの歴史を思えば素直に納得できるものでした。決してスマートな印象を与えるチームではなかったけれど,実力的な部分を思えば決して当時の強豪に引けを取るものではなかったはずです。実際,関東社会人リーグや東日本社会人リーグでの優勝経験はかなりのものです。ではあるのですが,不思議とメジャータイトルに手が届かない。全国社会人(「全社」などという言い方をしていました。)で“Last Loser”の立場から抜け出すことができなかったのです。のみならず,新日鐵釜石神戸製鋼スティーラーズ)が黄金時代を築く,そのアシストを結果的にしてしまいます。一時代を築いたチームを主役とするならば,その主役を望みもしないのに引き立ててしまったことになります。


 そんな「負の歴史」を,マイクロソフトカップ勝戦では思い起こさざるを得ませんでした。レギュラー・シーズン全勝を達成しながら,綿密なスカウティングの前に自分たちのラグビーを抑え込まれ,“Champions”という称号を譲り渡してしまう。それほどまでに,「負の歴史」の呪縛は強いのだろうか,と。


 それだけに,主導権を掌握し続けられるのか,を気にしていたのですが。


 激しいディフェンスからリズムを作り出す,彼らのリズムは秩父宮に,存分に表現されました。長く「準優勝」だけが刻まれてきた歴史に,遂に「優勝」というクレジットが刻まれました。今季のラスト・ゲームが,彼らの「新しい歴史」の始まりになってほしい,と思います。