霞ヶ丘、のおとなりへ(ラグビー日本選手権2回戦・前書き)。

想定よりも,はるかに風は強くて。


 LEDディスプレイ上に掲揚されているフラッグは,ハッキリとそのデザインが視認できるほどにはためいていました。


 神宮球場方向から,伊藤忠方向へ吹き抜ける風。その風に乗って,霞ヶ丘方向からのチャントが耳に入る。チャントだけでなく,歓声のような,どよめきのような響きも流れてくる。
 威力偵察,という選択肢も確かにありました。ありましたが。
 近鉄ライナーズがどこまでヴェルブリッツを相手に勝負を挑めるか,そして,早稲田がどこまでブレイブルーパスを悩ませるか,という方面の興味が勝って,


 「一粒で二度美味しいチケット」


を選んだのでありました。


 ラグビー日本選手権。変則的なカップ戦であります。特に1回戦〜2回戦は,対戦相手にある種のギャップが存在します。ちょうど,天皇杯3回戦であったり,4回戦のような感じです。
 それだけに,ゲームへ入っていく姿勢が中途半端なものであったり,相手のモチベーションを真正面から受け止めてしまうような形になると,ゲーム・マネージメントが必要以上に難しくなってしまいます。ラグビーフットボールは比較的実力差がファイナル・スコアに反映されやすい競技ですが,“アップセット”と無関係というわけでもありません。「危険な香り」がしやすいラウンド,ということになります。


 第1試合は間違いなく,ヴェルブリッツが守備面での甘さを見せたと思うし,第2試合ではスタンドの雰囲気を含めた「空気」にブレイブルーパスが気圧された時間帯があった,ということになるでしょう。
 このことを裏返せば,ライナーズはヴェルブリッツの見せた甘さを的確に突くことができた(来季トップリーグでの手掛かりをつかんだ)ということが言えるでしょうし,早稲田にしてみればゲームへの入り方はかなりいいものだった,ということになるでしょう。


 80分プラスを経過した時点での“アップセット”は,確かにありませんでした。ありませんでしたが,局面ベースで見るならば「小さなトラップ」には掛かっていた。


 最終的には,残るべきクラブがSFへと駒を進め,近鉄花園,あるいは秩父宮で「神経戦」のようなゲームを展開することになりました。細かいゲームの話は,追って書いていくことにしたいと思います。