興味深い試み(ATQチャレンジシリーズ)。

Advance To the Quarterfinal(準々決勝進出)。


 JRFUさんによれば,2011年RWCにおいて決勝トーナメント進出を目指すための活動でもあるそうです。何とも分かりやすい,と言いますか,ベタな名前ですけども。


 ただ,このアイディアはかなり意義深いと思っております。ATQチャレンジシリーズ「三地域対抗試合」について(JRFUオフィシャル)というリリースをもとに,楕円球な話であります。


 このATQ,基盤はユース年代からの一貫した強化プログラムであります。


 ごくカンタンに言えば,このようなものです。


 まず,“プレ・アカデミー”として高校世代の有望な選手を発掘,育成していきます。次のステップが“アカデミー”であり,高校〜大学年代の選手を30名ほど選出して,年間4回のアカデミー合宿を実施します。そして第3段階として,19〜25歳の10選手で構成される“ハイ・パフォーマンス・ユニット”を海外拠点において活動させる,というものであります。


 このATQプロジェクトと連動して,若手有望選手を中心とする選手選考を行い,このトーナメントが将来的な日本代表につながる“ATQスコッド”へのセレクションを兼ねる,ということのようです。また,このトーナメントは代表選手選出の範囲を,積極的に下部リーグへと広げていくという側面も持っていると感じます。日本代表スコッドには,ジェームス・アレジ選手の名がありますが,彼が在籍していたのはNTTドコモ関西。トップリーグではなくて,下部リーグにあたる“トップウェスト”を戦うクラブです。視野を下部リーグへと広げれば,可能性を持った選手がさらに発掘できる可能性もある。恐らく,そのような意識が働いているものと思うのですが,関西代表ですとホンダヒート豊田自動織機,関東代表であればNTTコミュニケーションズであったりサントリーフーズ,あるいは東京ガスや釜石SWから代表選手がセレクトされています。


 確かに,緩やかであるにせよ“オープン化(プロ化)”の傾向があるラグビーフットボールですが,基本的には「移籍」が難しいという印象があります。それだけに,ポテンシャルを秘めた選手ではあるのだけれど,下部リーグを主戦場としているためになかなか代表スタッフなどの目に止まらない,という可能性はあるでしょう。そういう事態を回避しながら,代表を構成する基盤を広げ,同時に“ハイ・アマチュア”(と言うか,“セミ・プロフェッショナル”と言うか。)であるTL勢などに在籍する選手と,大学勢とが同じフィールドで同じ強化セッションを経験することで,両者の間に生じているギャップを少しでも埋めていく。


 ラグビーフットボールにおいて,最も大きなギャップがあると思われるポイントを埋めることができるのは,いままでは「日本選手権」だけでした。もうひとつ,ATQというかなりハッキリとしたルートができたことで,継続的な強化がスムーズに動き出すかも知れません。


 ・・・楕円球の話だけにしておくのはもったいない,と個人的には思います。そこで,無理やりフットボールの話に繋げてみることにします。


 スポニチさんの記事に,前任指揮官に対する新たなポスト打診という話がありましたが。


 イビツァさんには,ATQコーチング・ディレクターである薫田さんのような役割を果たしてもらいたいな,と思いますね。フットボール的に言うならば,クレール・フォンテーンのボスであったエメ・ジャケさんのような位置付けを意識してほしい,と思うのです。


 今回取り上げたATQチャレンジシリーズは,代表スコッドには名を連ねていないものの,将来的にはスコッドに割って入るだけのポテンシャルであったり,パフォーマンスを見せる可能性を持った選手によって各地域代表が構成されています。ゲームそのものが目的,と言うよりも,ATQスタッフやJKによる強化セッションの方に大きな比重が置かれているもの,と理解すべきものだと思うのです。


 同じようなフレームを,フットボールでも意識しておくのは悪い話ではないだろう,と。


 で,イビツァさんのトレーニング・メソッドを考えると,将来的に代表チームを構成する中心選手を送り出す,という部分で大きな意味を持つのではないか,と考えるわけです。実際にトレーニング・メソッドを目にしたわけではありませんが,メディア経由での印象から言えば,“フリーラン”という要素だけではなくて,間断ない状況判断を伴ったフリーランを意識させているように感じます。戦術的な要素,という部分を突き詰める前に,ひとりひとりの選手が持っているパフォーマンスを最大限に引き出すために,フィジカルという部分でも,そして判断,“インテリジェンス”においても高い負荷を掛けていく。


 このことは,「代表未満」の選手たちにとって,大きな刺激になるはずだと思うのです。


 スポニチさんは,「協会のアドバイザー」というフレーズを使っていますが,“日本代表を側面からサポートする”というフレーズを実質化するのであれば,U−23代表だったりユニバーシアード代表とA代表を結び付け,あるいはディビジョン2やJFLでポテンシャルを持った選手を短期間であるにせよ,同じ枠組みの中でトレーニングさせる中から次世代の主力選手を送り出すための組織,そのディレクターとしての活躍を望みたい,と思うのです。