第45回ラグビー日本選手権(組み合わせ・暫定版)。

地味だけど,興味深いゲーム。


 そんなカードではないか,と思っております。例年,この時期に取り上げているラグビー日本選手権であります。暫定版,ではありますがトーナメント・ドロー(JRFUオフィシャル)をもとに,1回戦の話などを。


 大学勢と,ハイ・アマチュア。あるいは,大学勢とトップチャレンジ・シリーズ首位。


 「日本選手権」というトーナメントとしては,確かに地味かも知れません。ですが,大学チームが“プロフェッショナル・レベル”との距離を測るために,トップチャレンジを制したチームにとっては,来季に向けた補強ポイントをチェックするためにも,1回戦を勝ち抜くことは意味があると思うのです。


 ちょっと興味を持っているのは,近鉄ライナーズです。


 「古豪」という形容はできるものの,ここ数季における成績は「重要なゲームで結果を出せない」という評価が付きまといます。関西協会が所管する地域リーグ,“トップウェストA”では安定した成績を収め,トップチャレンジ・シリーズへの出場権を奪取します。このトーナメントは地域リーグ覇者による総当たり戦で,上位2クラブがトップリーグへの自動昇格となるものなのですが,このトーナメントで結果を出すことができず,入替戦を戦うことになってしまう。のみならず,この入替戦においても勝ちきれず,昇格を逃す。そんな,「勝ちきれない」状態を数季繰り返してしまうわけです。


 この循環を断ち切れたのが,今季です。主戦場とするトップウェスト(レギュラーシーズン)では3位だったものの,プレーオフを制して首位に立つと,トップチャレンジ・シリーズでも首位を奪い,日本選手権への出場権を獲得する。


 彼らの対戦相手は,慶應義塾大学であります。慶應サイドから見れば,来季からトップリーグに参戦するクラブ,その実力をフィールドで体感するチャンスですし,彼らを退けることができるならば「さらなる高み」を実際に感じることができる。大学チームという枠を飛び越えようとしてきたチームを,同じリーグ戦に持っているのですから,慶應にも同じ,あるいは彼ら以上の高い意識が必要ではないか,と思っています。そのためにも,今季選手権はひとつの「転換点」になってくれることを期待したいところです。


 さて,もうひとつの大学勢は,であります。前任指揮官である,清宮さんによって「高み」を現実に捉えた早稲田大学です。


 ラグビー日本選手権において,“グレート・アップセット”を演じた主役です。このときの対戦相手は,トヨタ自動車ヴェルブリッツ。早稲田のモチベーションを,真正面から受け止めるところからゲームに入ってしまったがために,リズムを引き寄せるまでの時間を使ってしまった。逆に見れば,ヴェルブリッツにそうさせるだけのプロット(清宮さんは,「ストーリー」という言葉を使いますが。)をシッカリと描き出し,戦術的な要素として落とし込んだ。そして,その戦術的な要素を早稲田の選手たちはシッカリと表現してみせた。彼らが描いているものは,恐らくこの姿の再現でありましょうし,このゲームを超えることでもあるでしょう。そのためにも,1回戦敗退などということがあってはならない。


 ただ,相手もハイ・アマチュアの雄。簡単にはいかないでしょう。クラブ大会を制したのは,現在早稲田を率いている中竹さんがヘッドコーチを務めていた,タマリバクラブであります。今季のクラブ大会,残念ながら実際に決勝戦を見ることはできなかったのですが,六甲クラブとの決勝戦を21−0で制し,日本選手権へと駒を進めてきています。このタマリバ,かなり戦術的にシッカリとしたラグビーを展開してくる印象があります。この印象に変わりがなければ,早稲田としてもそう簡単に乗り越えられる壁ではないのではないか,と思います。


 ・・・とは言え。


 大学勢がどこまでやってくれるか,という視点は例年と変わらないのも確かです。トップリーグ,その上位クラブを本気にさせるプレーを見たいというのは偽らざる本音ですし,アップセットを演じてもらいたいとも思う。今季,選手権を彩るのはどのクラブか。そんな見方を,1回戦ではしてみても良いのではないか,と思います。