対中国戦(東アジア選手権第2戦)。

特記すべき事項は(ゲームに関する限り)皆無。


 ・・・以上です。


 と,言いたいところです。


 持っているパフォーマンスを100%引き出し,オン・ザ・ピッチで存分にファイトするには対戦相手に対する敬意が必要であるはずです。ゲームをつくるにあたって,大事な条件であるはずの敬意が欠片も感じられない試合で,シッカリとメンタル・マネージメントを維持し続けたことが,(無理矢理探すならば)収穫でしょうね。


 ただ,そう言うには払った犠牲が大きいと感じてしまうのも確かです。


 “レイト・チャージ”なんて言葉で片付けるべきではない,あまりに悪質なファウルを受けた安田選手が,軽傷であることを。


 東アジア選手権・第2戦であります。


 いつもならば,対戦相手のことも(ある程度は)書いておこうと思うのですが,“football”とはまったく違う競技を(特に後半において)戦っていたようなので,書くこともないだろう,と。


 さて,日本代表に視点を固定して,フットボールの話をしましょうか。


 中盤をパッケージとして捉え,パッケージとしてのパフォーマンスを意識すれば,憲剛選手の存在はかなり大きいな,と感じます。確かに啓太選手の危機察知能力は高いのですが,実質的な“ワンボランチ”状態を想定すると,啓太選手が釣り出されたときの対応をハッキリとイメージしておかないと,大きなリスクを背負うことになる,と感じます。SBがセンター方向に絞り込んでいくのか,それともCBが対応に入り,CBのカバーにSBが入るとか。対して,フォーメーションとして同じ“ワンボランチ”であったとしても,ポジショニングによって実質的な“ダブルボランチ”の時間帯を作り出せれば,守備応対面でも安定性を確保できるし,攻撃面においてもオルタナティブを引き出しやすい。


 そんな時間帯を増やすためのキーパーソンは,スコッドを考えれば確かに憲剛選手なのだろう,と思うのです。


 第1戦では,啓太選手とのコンビネーションを誰が担うのか,という部分でいささか不透明なところがありました。遠藤選手,という形に落ち着きはしましたが,持ち味を殺してしまうかも知れないポジションだな,とも思います。であれば,オフェンシブな部分とディフェンシブな部分をうまく合わせ持っている選手がどうしてもバックアッパーとして必要になってくる。また,モダン・フットボールにあっては“アンカー”の存在は大きなものとなっています。また,チームの重心にキャプテンシーを持った選手がいる,という意味で啓太選手の重みは確かに大きい。この2選手に対するバックアップをどう考えておくか,というのはこのパッケージにとっての大きな課題になるかも知れません。


 恐らく,数字的な表現をすれば4−2−3−1(と,4−1−3−2を並行使用)ということになりましょう。中盤のタレントを考えると,田代選手の完全な1トップ状態と言うよりは,流動的にオフェンシブ・ハーフがちょっとギャップを作った形で前線との距離感を意識しながら入っていく,というようなハイブリッドだったかな,と感じるわけです。


 どうしても,ディフェンシブ・ハーフのポイントで安定性が確保できている,という確信が高まっていないと,「縦」方向への推進力が低下してしまって,なかなかパスワークが相手に対する脅威に直結しないような印象がありました。狭いエリアでのパスワーク,という部分では確かに方向性を感じさせる要素もあったのですが,なかなか「新たな武器」が威力を発揮するに至らなかった。対して,このゲームでは「縦」への意識はなかなかに高かったように思います。


 ・・・それにしても。


 ピッチに(かなり黒いと思われる)ポリティクスを持ち込む可能性があるレフェリーが指名される,というのは納得できないですね。


 東アジア連盟が主管するトーナメントであれば,レフェリーも東アジア連盟加盟国から選出されるべき。一見すると,「ごもっとも」らしい言い分ですが,「バカ言うな!」であります。


 ラウンドロビン第1戦は,まだ力関係が明確になりきらないから,ポリティクスが関与してくる危険性は薄いけれど,明確に力関係が把握できて,タイトル奪取のための勝ち点計算がリアルなものとなる第2戦まで,同じ構図でいいはずがない。ポリティクスが(明確な指示などがなかったとしても)作用しないとは限らないからです。正真正銘の「政治」が関わってくることをも考えなくてはならない,とも言えます。ハンドボールにおける「中東の笛」のようなもの。そもそも,オン・ザ・ピッチでのレフェリング以前の問題を抱えているわけです。


 であれば,同じアジアでもこのトーナメントに参加していない国からレフェリーを呼ぶであるとか,もっとフェアにと思うならばUEFAやCONCAFなどからレフェリーを呼ぶべきでしょう。


 初歩的な問題すら想定できないオーガナイズであることを露呈したわけです。であるならば,JFAには収穫と言うよりは課題でしょう。このトーナメントを続けるおつもりならば,FIFAやAFCなどをうまくコミットさせるように,正攻法のポリティクスを駆使する。この課題がクリアできなければ,「優先順位」などという次元の問題ではなくなる。そう理解してもらいたいものです。