アートな取り合わせ。
一方は「繭」をイメージさせ,もう一方は「彫刻」をイメージさせる。
同じインダストリアル・デザインでありながら,受ける印象は結構違ったりします。しますが,互いがシッカリとした主張を持っているから,結構面白くもある。そんな企画が,ミュンヘンの競技場で展開されているのだとか。
ということで,フットボールのような,でもフットボールとはまったく関係ない話など。
端的に言ってしまえば,「アートなコラボ」です。
バイエルン・ミュンヘン,そして1860ミュンヘンがホーム・スタジアムとしているアリアンツ・アレナはヘルツォーク&ド・ムーロンのデザインによる“アートな外観”を持ったスタジアムです。半透明特殊フィルムによって,普段は繭のようなイメージを与える一方で,マッチデイにはバイエルン,あるいは1860のカラーをまとわせ,ホームらしさを視覚的に演出することができる。機能をしっかりと持っているアート,であります。
で,コラボのお相手であるアウディ。
アート,という部分を意識しているメーカというのは確かでしょうね。神宮前に構えているショールームも,すごく独特なデザインを採用していますし,この記事にもあるようにアート・イベントを積極的に仕掛けてもいます。このTTも,もともとは2006年にブランデンブルク門とコラボするようにディスプレイされたものです。
最初は歴史とコラボして,次はアートつながりでコラボ。
実際には,バイエルンのパートナーである,というつながりで今回のアート・イベントとなったわけですが,現代美術を見ているつもりになってスタジアムへと足を向ける,というのも面白いかも知れません。
・・・ミュンヘンと言えば,ちょっと不思議なこともあるんですよね。ホントにオマケでありますれば,畳ませていただきまして。
でありますれば,同じくバイエルン州・インゴルシュタットに本拠を置くアウディがプロモーションをするのも不思議ではない,とも言えます。言えますが,かつてバイエルン・ミュンヘン,1860ミュンヘンが本拠地としていた“オリンピアシュタディオン”,そのすぐそばには,とあるライバル・メーカの本社があったりします。「バイエルン発動機製造(あえて,ダイハツのような表記にしてみました。)」,プロペラをモティーフとするバッジを付けるBMWであります。
この本社も,なかなかにアートですね。ついでに言えば,ここの製品も結構なアートです。Dセグメントに投入された商品は,それほど個性を前面に押し出すことはなかったけれど,Lセグメントをカヴァする商品がリリースされたときは,かなりのインパクトがありました。あまりに「衝撃的な」デザインだったために,チーフ・デザイナーであったクリストファー・バングルはこのメーカをつぶすためにデザイン部門に入ったに違いない,なんて言われ方をしてもいましたですな。また,このメーカとしては軽量級なスポーツ・モデルには側面にモデル名からインスパイアされたのでしょう,Zをモティーフにしたプレスラインをデザインしたりしております。
このメーカ,フットボールには意外と距離を置くようで。
バイエルン州のライバルであるアウディはバイエルン・ミュンヘンだけでなく,欧州トップレベルのフットボール・クラブとのパートナーシップを締結していますし,“スリーポインテッド・スター”をトレードマークとするメーカは,ドイツ代表チームをサポートしています。長谷部選手が移籍したクラブ,ヴォルフスブルクに至っては,アウディとグループを形成している会社と密接な関係を持っています。エールディビジを主戦場としている,PSVアイントホーフェンのような,欧州では珍しいクラブです。と,ライバル各社はフットボールとの関係が思い浮かぶのですが,BMWだけはなかなかフットボールとの関係性が思い浮かびません。販社レベルでは各クラブとの関係があるのかも知れませんが,少なくともミュンヘン本社はフットボールに対して,距離を置いているように感じます。
反面で,このメーカはモータースポーツには積極的です。
フォーミュラ1もオペレートしているし,ツーリングカー・レースでは昔から有名です。シュニッツァー,などのレース屋とのパートナーシップは,かなり強固であり続けているように感じられます。スポーツ・イメージならば,モータースポーツで訴求できるし,ほかのメーカと同じことをすることはない,なんて思っているのかも知れませんね。