「無冠の帝王」は帝王になれるか。
三洋電機ラグビー部,であります。その系譜を継ぐのが,ワイルドナイツ。
まもなく開幕するPSG,マイクロソフト・カップのプレビューをしようと思えば,どうしても頭に浮かぶのが「勝負弱い」かつての三洋電機ラグビー部の姿でもあります。
その姿は,幻影なのか。無冠の帝王という,決して喜べない称号を返上できるか。それとも,この称号に甘んじることになるのか。
ということで,今回は出村さんのコラム(スポーツナビ)をもとにしながら書いていこうと思います。
「最後に負ける、勝負弱いチーム(だから憎めなかったのだが・・・・・・)。」
という出村さんの表現は,そのあとに示されている戦績でも証明できるところです。
トップリーグが成立するまでは,ラグビー・フットボールに全国規模のリーグ戦は存在していませんでした。いわゆるトップレベルのリーグ戦は,東日本,関西,西日本と地域ごとに分割されたリーグ戦を戦い,このリーグ戦を制覇,あるいは上位に付けたチームが全国社会人ラグビーフットボール大会(全社,などと言われます。)を戦う資格を得たわけです。
その決勝戦は差し詰め,マイクロソフト・カップの決勝戦のようなものでしょうか。ちょっと失礼な言い方をするならば,三洋電機は全社決勝という舞台で「引き立て役」を演じ続けたのです。
古い話を持ち出せば,新日鐵釜石や神戸製鋼が黄金時代を築く,そのアシストを(必要以上にドラマティックな形で)してしまったようなものであります。
そんな勝負弱さが発揮されては,シーズン全勝も水の泡。そう,どこかで思ってしまうラグビー・フリークのひとも多いのではないか,と思います。思いますが,2007〜08シーズンのワイルドナイツは,強さに隙を感じることが少ないのも確かです。
攻撃面では,「縦」を意識した仕掛けが印象に残ります。つなぐ意識も確かに高いのですが,ボール奪取からエリアを奪回するまでの素速さが,つなぐ意識に「縦」の要素を組み込むための大きな要素になってくれているように思います。
また,ダイナボアーズ戦,そしてグリーンロケッツ戦を秩父宮で見ての印象ですが,今季のワイルドナイツは守備面でリズムを作り出しているように思います。相手ボール・キャリアーに対するファースト・ディフェンス(タックル)に厳しさであったり鋭さがあるから,必要最低限のユニットで相手の攻撃を受け止め,ボール・コントロールを回復することができる。グリーンロケッツ戦についてのエントリでも書きましたが,フラット・ディフェンスを微妙にボール・キャリアーに対して絞り込むようにして使っているために,タックルからボール奪取までの時間がかなり短いように思うのです。
そのために,フットボール的な言い方をすればショート・カウンターが掛けやすい守備であり,攻撃であるように思うのです。
となると,ブレイブルーパスとしても厳しいゲームになるかも知れません。
ただ,グリーンロケッツが見せたように,ワイルドナイツに「追い掛ける」ディフェンスをさせれば,局面は違ってくるかも知れません。ブレイブルーパスとしては,出村さんが指摘するように「ブレイクダウンでの激しさによってワイルドナイツの攻撃を抑え込む」とともに,ワイルドナイツが仕掛けるフラット・ディフェンス,その裏にあるスペースをどれだけ突けるか,あるいはディフェンスラインを作るだけの時間を与えずにボールを縦に運べるか,が鍵を握りそうであります。
ワイルドナイツにしてみれば,「不名誉な称号」を返上するためにも,渇望してきたタイトルを奪取するためにも大きな意味を持つゲームが,ブレイブルーパスとのSFです。ワイルドナイツに好意的なバイアスを掛けて見てしまうだけに,彼らがこのカップ戦を駆け抜けてほしいと思っています。