神経戦を仕掛けるべきは。

メディア経由のアピールという方法論は,感心しませんね。


 すべてのクラブが集まっているならば,なぜその場で真正面からトーナメントの位置付けなどに関してJFA,リーグとクラブが協議や調整をできる組織体制を整備するような提案をしないのでしょう。


 恐らく,誰もがうっすらと疑問を持っているはず。ならば,ある種のチャンスだと思うのです。


 浦和だけを軸にリーグが動くわけではない。そもそも,リーグ戦が1つのクラブだけで機能するはずもない。ならば,プレゼンスを示すチャンスでもあると思うのです。正面突破を図れるタイミングならば,その方がいいではないですか。


 G大阪社長“浦和優遇”に恨み節(Sponichi Annex)という記事であります。


 「神経戦」。


 最も有名なのは,サー・アレックスとアーセンとの間で展開されるものでしょうね。対戦が近付いてくると,タイミングをはかっているかのようにどちらかが戦端を開く。戦端が開かれたと見るや,双方がなかなかの攻撃を展開して,その攻撃はマッチデイまでやむことがない。それだけではなくて,試合終了後も攻撃が収まらないことさえあって,次回対戦へ「会戦」が持ち越されるように配慮しているのではないか,と思うほどでもある。


 こうなってくると,なかば「風物詩」のようなものです。実際,こちらの記事

 ファーガソンとの心理戦を楽しんでいるかって? もちろんだ。おかげで人生がより楽しくなるよ」


とのコメントが載っているように,アーセン自身はこの風物詩を楽しんでいるようです。


 ・・・何が言いたいか。


 コーチング・スタッフが神経戦を挑むのは,アーセンが言うように「エンターテインメント」であり,試合に注目を集めるためのプロモーションという意味合いもあると思います。また,選手にしっかりと下準備をしてもらうためにメディアの注目を意図的に引きつける,という意味もあるはずです。同じように神経戦を挑む傾向があるジョゼは,確かそのような意図を持って「意図的に」仕掛けていたようです。


 コーチング・スタッフによる神経戦は,試合に注目を集めるという意味においても,選手たちに対しては試合だけに集中してもらうという意味でも,歓迎すべきことでしょう。いつもフットボールを見ているわけではないひとであっても,タブロイドなどで扱われれば,「何のこと?」と意識はするはず。こういうプロモーションだってアリだろう,と思うのです。


 対して,クラブ・スタッフはポリティクスを真正面から展開すべき立場にあります。


 まず,前提として。


 佐野さんのコメントは,クラブ・トップとして当然のことだと思います。JFAに対してアピールをしてきた浦和だけが優遇されたかのように招集が見送られ,逆に自分たちは多くの選手が抜かれた。そのために,シーズン開幕前,という重要な時期にコンビネーションの熟成が図れない。フェアな選考を,ということは佐野さんに同意です。


 ただ,この前のエントリではありませんが,メディアを通じて言うべき話ではないな,とも感じるのです。表に出すべき話ではないな,と。


 それだけに,JFAに正面突破を図ったという部分に関しては浦和を評価したいところですが,反面でメディアへの“リップサービス”は不必要だったと思っています。


 佐野さんに対しては,JFAに対してしっかりと意思表示をするための「正規ルート」を切り開くべく,むしろ浦和を抱き込むくらいのことをすべきだ,とお勧めしたい。さらに,代表へ選手を送り出しているクラブへもしっかりとした根回しをするくらいのことがあってもいいのではないか,と。


 このケースでは,本当に問題にすべきは浦和だけが優遇されたかのような形になった,ということだけではないでしょう。端的に言えば,どのようなチーム編成を「戦略的に」すべきかという視点を落としたままにワールドカップ予選と直線的に関連させ,代表チームを招集したJFAサイドのロジック・フローを問題にすべきではないでしょうか。ウェイトで言えば,こちらの方が重いはずです。中途半端な日程なのは間違いないのですから,実質的なB代表であったり,あるいは五輪代表とのブリッジ的なチームを組むことで,A代表を構成する基盤を大きくするという戦略が見えてもいいところです。そのときに,NPBがやったように各クラブからの招集人数を制限するという形を導入してもいい。


 リーグが代表を支えている,ということを実効あらしめるためにも,実行委員会を活用するというのが本筋だろうと思うのです。(すべてにおける正解だとは思っていないけれど)欧州に急速に近付きつつあるとするならば,フットボール・ポリティクスという部分でも欧州的な部分を取り入れるべきは取り入れないといけない時期なのかも知れません。