Serious, Gentlemen?

かつて,孤立主義を掲げていたお国柄とは思えませんね。


 と言いますか,「海外進出」をせざるを得ない事情があるのではないか,と考えてしまうところです。


 asahi.com:英プレミアリーグ、海外公式戦を検討 5都市でという,朝日新聞さんの記事であります。


 ちょっと要旨をかいつまんでみますに。


 リーグサイドは,2010〜11シーズンあたりから,公式戦を1ゲーム増加させて,その増加分を世界5都市で2ゲーム開催する,という計画なのだとか。その意図を朝日さんは,アメリカン・スポーツが積極的に展開している世界戦略と並べる形で説明しています。


 で,ガーディアン紙でもこの話は扱われておりまして。メールで送られてきたニュースレター,その記事には「いささかバカらしい」という結論が提示されていました。個人的にも,ガーディアン紙の論旨に同意したいところです。


 ガーディアン紙では,5都市,という部分に注目しています。つまり,NHKでも“BIG FOUR”として扱われるクラブ,そしてもうひとつのクラブを軸として,“プレミアシップ”のプロモーションを展開しようと意図しているのではないか,と見ているようなのです。上位5クラブをシードして全開催地に分配,残る15クラブをドローによって振り分ける,となれば,ここ数季の実績を思えばビッグ4プラスアルファ,ということになるのは間違いないわけです。


 で,公式戦だと。


 海外での「プロモーション」(マーケティングが前面にある)という色彩を薄めるためには,プレミアシップ・ポイントがかかっている体裁にした方がいい,という戦略もあるのではないか,と疑いたくもなります。


 2回戦総当たり制は,ある意味で最もフェアなリーグ戦形態です。そのリーグ戦に,無理に1ゲームを追加する必要があるのか,という素朴な疑問もありますし,海外での積極的なプロモーションを展開しなければならないほどに,リーグはさらなる資金を必要としているのか,という疑問も出てきます。と思っていたら,FIFAもプレミアシップに対して海外進出計画に対する調査の意向(スポナビ - 時事通信)があるとか。


 こちらの記事を斜め読みしてみますと。


 そもそも,代表チーム,クラブ・チームの国際試合実施に際しては,FIFAの承認が必要なのだそうです。


 プレミアシップは20クラブが参戦する,リーグ戦としては規模の大きなものです。確か,試合数の検討がFIFAだったか,UEFAが主導して行われ,プレミアシップはリーグを構成するクラブ数を削減する方向性を緩やかに打診されていたような記憶があります。にもかかわらず,海外でのさらなる試合実施を検討している,となると,FIFAやUEFAが「過密日程に拍車を掛ける可能性」を考慮するのは当然でしょう。また,この記事にあるUEFA幹部筋の「お金目的」という懸念も杞憂とは言えないところがあります。アメリカン・スポーツの積極的なプロモーション,といいますか,世界的な視野に立ったマーケティング戦略は魅力的なのかも知れませんが,“フットボール・バブル”という言葉もちらつきます。また,孤立主義を掲げていたときに意識していただろう,「ホームタウン」に立脚したリーグ戦という基礎が,揺らいでしまうのではないかという懸念もあります。


 そもそもアメリカン・スポーツは,世界的に見るとマイナー・スポーツという分類になってしまいます。それゆえ,競技そのものに対する認知度を引き上げたいという意図もあるでしょう。ならば,“ベースボール”(野球)がすでに認知されている日本で,公式戦を開催する意味はない,と個人的には思っています。ボストンのゲームはフェンウェイ・パークで開催されるからこそ意味があるのであって,東京で開催されることには違和感を持たざるを得ません。


 それはさておき。すでに世界的な認知度を持っているフットボールという競技に,そのような意図を見出す必要はないだろう,とも思いますしね。リーグとして市場開拓をしなければならない状況にある,という見方もできるかな,と思うのです。


 やはり,ガーディアン紙ではありませんが,「いささかバカらしい」話だと思います。イングランドびいきではありますが,「あんたら,本気か!?(ジョークもほどほどにしてくれよ!)」というのが,偽らざる心境です。