懐かしの“Injury Time”。

フットボールでは,“Additional Time”なんて言い方をします。


 「ロスタイム」ですね。


 戦術交代時に掲示されるLEDボードで,ゲーム・クロックが45分を指し示すちょっと前に表示されます。たとえば「3」という表示がフォース・オフィシャルによって掲示されたとすれば,4分未満の時間がゲーム・タイムに加算されるというシステムであります。


 かつては,ラグビーフットボールでも同じスタイルを採用していました。


 ただ言い方はちょっと違って,“Injury Time”(インジュリー・タイム)という言い方でした。基本的に戦術交代が許されず,選手が負傷したなどの理由によって,仕方なく選手交代があるという時代の用語であります。その後,フットボールと同じく戦術交代が許されるようになると,インジュリー・タイムという言葉ではなくて,ロスタイムという言葉に変わっていきます。


 これらの言葉,2007〜08シーズンには「死語」になっているのです。


 ということで,今回は【トップリーグ】ジャパンラグビートップリーグ2007-2008 タイムキーパー制 正式採用決定のお知らせ(MSN スポーツ)という記事をもとに書いていきます。


 コレ,実はかなり古いお話でして。


 去年の10月の段階で導入されているのですが,すっかり予備知識を忘れた状態で秩父宮に足を運んだおかげで,ビックリしてしまったのです。


 秩父宮にあるLEDディスプレイのとなりには,時計とゲーム・タイマーがあります。国立霞ヶ丘や中野田,あるいは横浜国際などと,同じ配置です。昨季まではアナログ・タイマーとデジタル・タイマーが同時に作動していたのですが,今季からはホイッスルによって動き出すのはこのアナログ・タイマーの下にある,デジタル表示のタイマーだけだったりするわけです。
 最初,秩父宮でアナログ・タイマーが動いていないのを確認したときは正直,ビックリしました。また,感覚的に15分くらいであるとか,あと・・・分で時計が止まる,という時間帯にディスプレイを見てみると,意外に時間が経過していなかったり,前半終了(あるいはノーサイド)までちょっと時間がある。


 そこで,「タイムキーパー」制を思い出すわけです。


 40:00というデジタル・タイマーの表示と,レフェリーによるホイッスルを限りなく同時に近付けるための規則変更,です。
 40分というゲーム・タイムを実質的なものとして位置付けるためには,確かに有効なシステムだろうとは思います。ラグビーフットボールでは,確かにどのくらいのロスタイムが残っているかというのは,少なくともアウトサイドからは分かりにくかったところがあります。スタジアムに足を運んでいるひと,あるいはTVを通じてゲームを見ているひとにとっては,時間経過が分かりやすくなった,とも言えるでしょうか。タイマーが0からの積算になっている,というようにディテールには違いがありますが,アメリカン・スポーツのような形へと変更を受けたわけです。


 ただ,個人的にはラグビーの持っている魅力が薄れないかな,なんて思いもします。


 40分でタイマーが止まってからの時間帯はすごく緊張感がありました。プレーが切れてしまえば,ともすればノーサイドを告げるホイッスルが響くかも知れないし,逆にロスタイムが意外にも長く取られていて,ゲームを決定付ける時間帯としてロスタイムが作用するときもある。
 高校ラグビーの地区予選などでは,ロスタイムにドラマが結構多くあるようにも思います。
 そんな,ゲームをドラマティックにする「隠れた舞台装置」がロスタイムという存在だったかな,などと思うところもあるので,40分が経過した時点でのホーン,そこから程なくレフェリーによって宣告されるノーサイド(前半終了)というのは,ちょっと味気なくも感じるのです。