Bronze Prize(FCWC・M6).

耐えて奪った“Bronze Prize”。


 そんな印象が強い,厳しい3位決定戦でした。


 立ち上がりの時間帯に,鋭い逆襲に対して守備応対が後手を踏み,結果としてPKを与えてしまう。のみならず。仕掛けの強度を強めていこうとしても,エトワールはシッカリとした守備ブロックを構築していた。ボール・ホルダーに対してシッカリとしたプレッシャーを掛け,ボール・レシーバとなる前線に対しては数的優位を構築してでもフリーでボールを収めさせない,という姿勢を徹底させていた。


 そのために,守備ブロックに隙を作り出そうとしても跳ね返される時間帯が多かった。


 その流れを引き寄せたのは,左アウトサイドからのピンポイント・クロス。この局面,アウトサイドに対するプレッシャーはそれほど厳しく掛かってはいなかった。ボール・コントロールを安定して発揮できる条件は整っている。そして繰り出されたクロス・ボールは狙い澄ましたようにボックスに詰めていた、“21”を背負う選手へと渡る。彼のヘッダーによってエトワールのゴールマウスを揺さぶることに成功し,ゲームを振り出しへと戻す。


 そして後半,リードを奪ったのも彼のヘッダーだった。


 このまま,ゲームをクローズできれば理想的だったかも知れない。だが,エトワールの縦にシンプルな仕掛けに対して,守備ブロックは守備応対をアジャストしきれない。縦への一瞬の鋭さを抑え込めず,結果としてゲームをイーブンへと引き戻される。


 そして,勝敗はペナルティ・シュートアウトへと委ねられる。


 ペナルティ・シュートアウト,その1番手は浦和のエース・ストライカー。


 彼は持てるプライドを叩き付けるかのように,シュートを突き刺す。対して,エトワール・サヘルの1番手が放ったシュートは,左側のポストを直撃,外側へと弾かれる。


 そしてエトワール・サヘルの4番手。


 GKの読みは,ともすれば外れていたのかも知れない。右側へと反応した身体とは違い,シュートの弾道はセンターを狙ったものだった。しかし。ギリギリまで身体の反応を遅らせたのだろう,足がシュートを抑え込む。


 この瞬間,2007シーズン最終戦での勝利が確定する。


 ・・・2007シーズンの最終戦にして,ワシントン選手のラスト・ゲーム。


 FCWCでの3位決定戦だから,ということ以上に,「勝ってシーズンを終わりたい」という意識のほうがハッキリと強かった。相手との実力差はほとんどない,あるいは相手の方が実力的に上回る部分もあったかも知れません。それでも,「結果」を叩き出すことに成功した。


 いまはまだ,想いを言葉にするのは難しいけれど。


 あなたにとっての浦和での時間は幸せなものだったでしょうか。少なくとも,幸せな時間を共有させてもらったと,私は強く思っています。そして,あなたが残したものは大きなものがあるとも。


 浦和という長編があったとして,リーディング・クラブとして駆け上がっていくチャプターを構成する大きな要素です。あなたなしには,このチャプターは書けなかったでしょう。


 FIFAからの“Bronze Prize”。ちょっと鈍い色かも知れませんが。あなたが浦和にもたらしたものは,もっとまばゆい光を放っているはずです。すべてのことに,感謝を込めて。


 "Muito Obrigado!"