対横浜FC戦(07−34A)。

戦術的な成熟度であったり,コンビネーションの熟成度だったり。


 そういう話をする前に,出足の鋭さであったり,あと数歩の詰めなどという「距離感」の問題が大きかったように思います。


 恐らく,ひとりひとりの選手のイメージには,ボールに反応している部分があるのでしょうが,実際にピッチに表現される段階になると,タイミングのズレであったり,微妙な距離感が影響して,相手にボールを支配される時間帯が多くなってしまったように見えるのです。


 ボールが収まるはずのタイミングで,ボールが収まらない。相手ボール・ホルダーに対してファースト・ディフェンスに入っているにもかかわらず,プレッシャーをしっかりと掛けられないためにボールの展開を許す。逆に,足元を狙ったパスが足元深くに刺さるように収まるために,コントロールを取り戻すまでのタイミングを狙われ,ボール・コントロールを失ってしまう。


 あまりにも,「らしくない」ゲームでした。


 コンディション悪化は,チームが表現できるはずのフットボールを奪い去った,ということになるでしょう。最終節・横浜FC戦であります。


 「縦」への積極的なフリーランが仕掛けられない状態であるにもかかわらず,実際には「縦」への意識が強すぎて,前線と最終ラインとの距離が浦和が持っているリズムを作り出せる,適切な距離感に維持しきれなかったように見えます。また,ボールをホールドしながら相手守備ブロックを引きつけ,スペースを作り出すという部分でもちょっと単調さが目立ってしまったように思います。アウトサイドを意識しながら仕掛けを組み立てる,という戦術イメージがあるとすれば,その戦術イメージに幅を作り出したいわけですが,実際にはかなり深い位置にまで持ち込んでからトラバース・パス,という形がいささか多く,相手守備ブロックを揺さぶるようなバリエーションがなかなかつくり出せなかった。


 そのために,相手センターを引き出すことができず,結果として守りやすい状況となっていったように見えます。


 また,「攻撃の端緒」としての守備が機能しなかったことも大きいように思います。


 相手ボール・ホルダーを追い詰める,という形のファースト・ディフェンスがなかなか仕掛けられなかった。ボール奪取,という形でのプレッシングではないにしても,相手の仕掛けを限定し,最終ラインへと追い込んでいくようなプレッシングが本来は掛けたいはずなのに,なかなかパス・コースを切れなかった時間帯が多かったように感じます。となると,相手ボール・ホルダーに主導権を握られた状態で,リアクティブに守備を仕掛けなければならず,消耗も早まってしまったのではないか,と感じます。


 ・・・フル・ブレーキがかかってしまったわけでありますが。


 この失速を経験したことは,決してマイナスではないだろうと思います。むしろ,さらなる高みを目指すならば必ず乗り越えていかなければならない課題を,提示されたのだろうと思うのです。


 モダン・フットボールでは,どうしても「縦」への速さを作り出していかなければならないですし,相手守備ブロックが構築している壁に動揺を生じさせることから,縦へ走り込むことのできるスペースを作り出していかなければなりません。単純に,前線へとボールを送り込むだけでなく,どれだけ丁寧に相手守備ブロックを引き出し,スペースを生み出せるか。この部分で,熟成させるべきイメージは多いはずです。


 そして,そのイメージを共有できているグループを,徹底して大きくしていくこと。「浦和」が狙うフットボールが,ピッチに立っている選手によってズレを生じていたり,表現に微妙なニュアンスの差が出てしまってはなりません。スターターだけがイメージを築き上げているのでは不足です。もっと,大きなグループでイメージを作っていかなければなりません。


 リーグ戦は,クラブの総合力を厳しく問うてきます。その意味で,最終盤での失速はどこかに足りない部分が厳然と存在することを示したのだろうと思うのです。「二兎」を追う,あるいはそれ以上の兎を追うために,過酷なシーズンを乗り切るために何が求められ,現状のクラブでは何が不足してしまっていたか。しっかりと見直すことが重要なのだろう,と思うのです。