対鹿島戦(07−33)。

相手を受け止めるのではなく,積極的に仕掛けるための予備動作。


 守備的な要素を「攻撃の端緒」として考えるならば,今節は相手の描いただろうゲームプランが機能したということになるでしょうか。


 鹿島戦,であります。


 ショートハンドに陥るまでは,ミッドフィールドで積極的にボール奪取を仕掛け,高い位置から流動的にポジション・チェンジを仕掛けていく中から攻撃を組み立てる。ショートハンドになってからは,アウトサイドからの仕掛けにはある程度の割り切りを持ちながら,センターでの安定感を強く意識することで「縦」へのスピードを徹底的に抑え込む。となれば,ボール奪取位置が相対的に低くなっているから,ロングレンジ・パスを基盤とした仕掛けが徹底されることになる。


 対して,ミッドフィールドでの厳しいプレッシャーにさらされることでリズムを構築しきれなかったチームは,相手のショートハンドによって確かにリズムをつかみやすくなったところはあります。


 フィニッシュへ持っていく,という部分での仕掛けは圧倒的に有利になってきていたように思います。アウトサイドからの仕掛けが有効に機能しはじめたのは確かです。また,ポジション・チェンジという部分でもディフェンシブ・ハーフがアウトサイドとのコンビネーションから縦への突破を仕掛ける局面が多く見られるなど,ピッチサイズを存分に生かした攻撃が「部分的には」機能したように思うのです。ですが,アウトサイドでの主導権を,どのようにして相手守備ブロックを崩す方向へと直結させるか,という部分で今節は引っ掛かってしまったように思うのです。フィニッシュに持ち込む段階での難しさが増してしまったような印象があるわけです。


 「縦」へのスピードがアウトサイドであったとしても,センターに構えている守備ブロックを横方向へと釣り出せなかったところがあるし,そのためか,センターでの窮屈な状態はなかなか解消しなかった。また,アウトサイドからの仕掛けも,深い位置からクロスを繰り出すだけでなくセンターへと絞り込んでいくような動きや,アタッキング・サードの浅い位置からスペースを狙ったクロスを繰り出すなどのバリエーションがなかなか広がらなかった。


 シンプルに,フィニッシュを狙うという方向性が裏目に出てしまったようなところがあるように思うのです。


 パス・ワークによってスピードを作り出すのであれば,フリーランの段階でのスピードが求められることになるはずだし,パスの方向性にしてもピンポイントでのパスではなく,スペースを狙ったパスを繰り出すことが求められるはず。こういう部分で,戦術的なイメージがハッキリと共有されていなかったところがあるように感じられます。「スペースを狙う」という部分では,数的不利に陥り,戦術的なイメージが否応なくひとつの方向性へと収斂していった相手の方が,意識を強く持っていたように感じられます。


 結果として,仕掛けの分厚さを作り出し,チームが前掛かりになったタイミングで守備ブロックを揺さぶられてしまう。


 ・・・なかなか,パワープレイが得点機へと直結しないような印象があります。


 特に今節は,どこかで「気負い」のようなものもあったかも知れません。その気負いが,「焦り」という要素へと転化してしまったようにも。特に,先制点を奪取されてからのチームには,「縦」にボールを送り込むという意識がかなり強くなってしまっていたような印象があります。シンプルに,という部分だけが強く意識されてしまった。


 確かに,ホームで高みを陥れたいという望みは自然だし,その望みを現実とするために,という気持ちが入っているのは当然のこと。ただ,その意識がシッカリとピッチに伝わりにくかっただけ。気持ちをピッチに伝えるために,ちょっとだけ「冷徹さ」というエッセンスが加わっていればよかった。そんな印象が確かにありはします。


 だからと言って,状況が厳しくなったなどとは思わない。


 足踏みはしたけれど,主導権を握っているのは間違いないし,最終節で「勝ち点3」を奪取するという,ある意味ではこれ以上ないシンプルな目標ができた。リーグ戦というのは34ゲームで戦われるのであって,33ゲームで戦われるわけではない。最終節に持ち込まれたからといって,やるべきことは明確になっている。そのことだけを意識しておきたい,と思います。