継承されるセダン・ボディ。

便りのないのはよい便り,と信じて。


 フットボールとは関係ない,屋号なエントリなどを。


 そもそものはじまりは,ギャランVR−4でありました。


 当時,WRCを席巻していたのはランチア・デルタ・インテグラーレです。思えば,このクルマがいまにつながるフォーマットを提供しているのですが,フロント,リアのオーバーハング(ホイールハウスからバンパー先端までの距離)をギリギリまで詰めることのできるHBボディを採用していました。これに対して,VR−4はセダン・ボディを採用していたためにすごく大柄だったのです。端的に言ってしまえば,“ハンディ”だったはずです。


 ただし,エンジン・パワーという部分では参戦当初からトップレベルだったのも確かです。


 確か,WRC初勝利を挙げたのはエンジン・パワーが“スピード(SSタイム)”へと直結する1000湖ラリー(ラリー・フィンランド)だったはずです。ラリー競技は舗装路面を主戦場とするターマック・ラリーと,不整路面を主な舞台とするグラベル・ラリーとに大別されます。ラリー・フィンランドグラベルに分類されるのですが,路面が固く締まっていて,ほぼターマックと考えていい,高速コースなのです。そのため,エンジン・パワーが戦闘力に大きく関わっていくのです。そんな舞台で初勝利を挙げたVR−4に搭載されていた“4G63”型エンジンはパワフルで,ボディ・サイズを小さく変更してきた“ランサー・エボリューション”シリーズにあってもこのエンジンは継承されてきたわけです。そして,今回発表されたランサー・エボリューションXでは,いよいよ4G63に別れを告げました。告げましたが,継承されたモノがあります。それがタイトルに掲げた“セダン・ボディ”であります。



 アウディ的な表現をすれば,“シングルフレーム・グリル”が印象的です。


 といっても,アウトバーンでの視認性を強めたり,ブランド・アイデンティティを強く主張するためのデザイン,というわけではなく,すこぶる実戦的な理由があるのは当然でしょう。DOHCエンジンをターボ・チャージしているわけですから,発熱量は凄まじいものがあるのは言うまでもないところです。また,ターボの過給効率を高めるためには過給気を冷却させることで充填効率を高めたいわけです。となれば,ラジエターやインタークーラーへの空気の流れをシッカリ確保させたい,と。デザイン,というよりもクーリングを考えた必然であろう,と思うわけです。当然,取り入れた空気は抜きたいのでありまして,フロント・フェンダー後方にはエア・アウトレットが切られています。


 さて,セダン・ボディです。


 WRカー規定を考えれば,決して有利なディメンションを持っているとは言えません。歴代シトロエンやフォード・フォーカスを想像してもらえばすぐにお分かりいただけるか,と思うのですが,かつてのデルタのようにオーバーハングは切り詰められているのです。エンジンに関するチューニング可能範囲が広がっているために,クルマそのものが持っている物理的な条件が逆にクローズアップされてしまうわけです。このために,ライバルである富士重工インプレッサをHBへと仕立て直してきました。


 対して,三菱はセダン・ボディを維持してきた。グループA車両でギリギリまで闘っていた時期から,4WD制御技術によってコーナリング・マシンを作り上げようとしていたのですが,恐らくはこの路線を継承していくのでしょう。


 ある意味では主流から外れた判断を,敢えてしている。それだけに,どういう形でWRCへと復帰していくのか,ちょっと楽しみでもあり,期待するところもあるのです。