闘うための「ベスト」。

リーディング・クラブへの地歩を固めたひとであれば,敬意を持っているのは当然ですが。


 「二兎」を追うためには,「専務理事」としてのコメントには反論せざるを得ませんね。


 コーチング・スタッフから戦うためのパッケージを作り上げる,そのフリーハンドを奪うようなコメントだったわけですから。


 ・・・考えてみれば,そもそも「専務理事」が物議を醸すコメントをした対象は今節の対戦相手。イロイロと関わりがあるな,とは思いますね。ということで,ちょっと「ベスト・メンバー」にかかわる話などを。


 確かに,「浦和」が持っているフットボール・スタイルを表現するためには,どうしてもピッチに立っていてほしい選手,というのは存在します。ただ,“フィットネス”が浦和らしい戦いを100%表現するための水準に達していないとすれば,あるいはフィットネス低下が新たなケガを引き起こし,さらに長い戦線離脱を引き起こしかねないのであれば,チームとしてのパフォーマンスを優先させるのは当然ではないか,と思うのです。


 少なくとも,戦術交代枠があるのだから,主戦パッケージにはできる限り変更を加えず,コンディションが上がりきらない選手は早い段階で交代させる,という方法論もありますが,ゲーム立ち上がり,という最も危険な時間帯に,フィットネスが不安定な状態にある選手を使うリスクは,決して見逃せるものではありません。


 さらに言えば。そもそも想定される交代枠をスターターへと振り向けてしまえば,新たな選手をリザーブとして置くことができるはずです。


 「ベスト・メンバー」というと,単純に主力選手を考えます。


 確かに,そのクラブでの主力級はベスト・メンバーと表現できます。ですが,目前に控えるゲームで「100%戦える体制」,という意味でのベストなのか?という視点もまた重要ではないか,と思いますし,ちょっと極論を言うようですが,今節は90分ハーフの決勝戦を戦っている,そのハーフタイムに行われる「もうひとつの重要なゲーム」という見方もできます。


 「2つの高み」を同時に見据えるがゆえに,パッケージを変更する。


 決勝第2戦で「100%戦えるベスト」を組み上げるためには,リーグ戦で「100%戦うためのベスト」がちょっと違う可能性があったとしても,おかしいとは思いません。


 「結果論」で批判される可能性があるならば,「結果」でねじ伏せればいいだけのこと,です。もうひとつのパッケージこそ,「今節におけるベスト」なのだと誇示するように。


 ・・・などと書いてきましたが,実際にはパッケージ変更が最低限に抑えられる可能性の方が高いかも知れない,などとも感じます。ホルガーさんの方針,なのかも知れませんが,パッケージを構成する主力選手,その枠が意外にもコンパクトだからです。


 スターターを固定することによって,2006シーズンを戦ってきたパッケージを微調整し,戦術的なモディファイを仕掛けようとしていたから,という部分もあるのでしょうが,積極的にパッケージを広げようとしていなかったようにも受け取れるからです。


 とは言え。


 スターターが表現するフットボール・スタイルとは違う,ちょっと幅のある戦術が表現できる可能性は残されているはずです。ディフェンシブ・ハーフのコンビネーションにしても,“シングル・アンカー”と表現すべき主戦パッケージから,ツイン・アンカーを採用したパッケージへと移行することが可能になるし,戦い方にしても,ポゼッションをある程度意識する中で“セミ・カウンター”を狙うような戦い方から,縦への鋭さを徹底的に生かしたフル・カウンターへとギアチェンジすることが可能になるはずでして。それは,ホルガーさんがかつて浦和を率いていたときの戦術イメージと重なり合う部分があるはずです。


 現実的に「2つの高み」を陥れる可能性を持っているからには,持っている戦力を徹底的に使いながら,戦うための「ベスト・パッケージ」を組み上げてほしい,とやはり思うのです。