二兎を追うためのダイナミズム。

よくもまあ,派手な見出しを付けてくれましたが。


 フットボール・クラブの総合力を,リーグ戦というのは問うはずでしてね。単純に,主力選手で構成されるパッケージ「だけ」で乗り切れるほど短期間でも,そして甘くもないでしょう。


 リーグ戦は長期にわたるのですから,主力選手に負傷という事態も当然発生するし,警告累積によるサスペンションだってある意味では不可避な部分があります。加えて言えば,主力選手すべてのコンディションが100%,あるいは限りなく100%に近いレベルで安定していることなど,ほぼあり得ない。実質的なことを冷静に考えるならば,理想的なパッケージを組めるゲームのほうが少ない,という考えだって十分に成り立ちます。そのときに,どれだけ“Best Compromise”,あるいはセカンド・ベストとも表現すべきパッケージを組めるのか,が問われるのは当然でしょう。そして,見方を変えるならば,あるタイミングでのセカンド・ベストとは当該時点における「ベスト・パッケージ」でもあるはずです。


 ・・・いきなりはじめてしまいましたが。


 今回は,鈴木&安部(←誰?「阿部」選手,ですね。)W故障…DF陣崩壊寸前(デイリースポーツonline)という記事をもとに、と言いますか,ちょっと反面教師的に扱いながら書いていきます。


 もともと今季は,日程面から大きな負荷がチームには掛かることが想定されていました。


 実際には,ACLがノックアウト・ステージの段階に入ると,ひとつひとつのゲームの持つ重要性,そして物理的な日程面や距離的な部分からの負荷が,中盤から終盤へと入ってきたリーグ戦と重なることで,チームへと想定を超えて重くのしかかってきたような印象があります。


 そういう部分から言えば,この記事で記者さんが指摘するように浦和のフットボール・スタイルを表現するための鍵を握るプレイヤーが,戦線から離脱することは大きな痛手ではありましょう。しかし同時に。フットボール・ジャーナリスト(にしてプロ・コーチ)である湯浅さんのフレーズを借りれば,「脅威を機会」に転換できる絶好のタイミング,と言えないこともないように思うのです。


 たとえば,現状で右アウトサイドが空席になっている。


 となれば,いくつかの選択肢が見えるように思います。そのパズルを解くときに,スターターとして再びクレジットされる選手も出てくるでしょうし,リザーブとしてチャンスをつかみ取る選手もいるはずです。同じように,ディフェンシブ・ハーフのポジションにも,ストッパーのポジションにもチャンスをつかみ取ろうと虎視眈々と狙っている選手がいるはずで,これこそがチームの持っているダイナミズムであるはずだ,と思うのです。


 ACLという高みを現実的な射程へと収め,リーグ戦という高みも再び陥れられるだけの距離へと詰めつつある。いまはちょっとしたインターバルにあるけれど,再び訪れる過密日程を乗り切るためには,優先順位(ある程度大規模なターンオーバー制)も必要になってくると思いますが,その前提としてチーム内競争が健全に機能し,誰がスターターとしてクレジットされようと「浦和」としてのクオリティが維持されるという,ダイナミズムこそが求められるのかな,と思います。ある意味で,デイリーが煽る危機は,クラブにとってのチャンスと捉えるべきではないか,と思うのです。