スウッシュとダブル・ダイヤモンド。

考えてみると,どちらともサプライヤー契約を締結しているわけですな。


 ダブル・ダイヤモンドをトレードマークとするサプライヤーさんからは,1997シーズンに供給を受けています。このサプライヤーのデザインは不思議と凝っていて,遠目から見ればすごくシンプルな真紅のユニフォームなのですが,ちょっと近付いてみると駒場スタジアムを俯瞰した姿が,ジャカードで表現されている。
 また,裾部分にはMUFCを代表する名将,サー・マット・バスビーさんの言葉である,“PLAY TO THE LIMIT IN THE RIGHT SPIRIT”というフレーズがプリントされている。それまでも,浦和らしいこだわりを落とし込んでいたユニフォームですが,このときもかなりのこだわりが入っていたように記憶しています。


 さて,もうひとつのスウッシュさんですが。


 こちらとは現在もサプライヤー契約を継続中でありまして。
 ただ,2004シーズン,サプライヤーさんが変更されて最初のシーズンには,少なからぬ違和感がありましたね。それまでのユニフォームがかなりクラシカルな,レースアップ・スタイルの襟を持ったものだったのに,このときは独特なカッティングを採用した襟なしモデル(と言いますか,後ろ半分だけ微妙に立て襟)を採用してきた。ポロ襟が伝統,と思っていただけに,「あらっ!?」という感じが強かったわけです。
 また,真紅と言うにはちょっとだけ黄色味が強かったような気もします。鮮やかであったのは間違いないところですが,深みのある真紅,と言うにはちょっと軽めな印象があった。


 そんな印象は,シーズンが進むにつれて薄れていきますし,テキスタイルに表現される「真紅」も深みを増していった。“deep dive”(クラブの歴史に敬意を払う)というコンセプトを持ち込んだ2007シーズン・モデルは,近くで見れば現代的なカッティングを施されたモダンなユニフォームなのですが,カッティング・ラインを無理に強調せず単色で統一したこと,シンプルな立て襟を追加したことで渋みを作り出すことに成功しているような印象もあります。


 そんな2社。なんと,同じグループになるそうです。ということはつまり,ナイキがアンブロを傘下に収めるわけですが。


 ナイキが英アンブロ買収、サッカー界で存在感高めること狙う(NIKKEI NET - ダウ・ジョーンズ)という記事であります。


 と言っても,ダブル・ダイヤモンドがいきなりスウッシュの下請けになったり,ダブル・ダイヤモンドが消えてしまうということはないようです。コンバースだったり,コール・ハーンのように「独立したブランド」として運営されるようです。
 アンブロにしてみれば,経営基盤を安定させるうえでナイキという存在は大きいはずですし,ナイキとしてもフットボール,そしてラグビーフットボールの世界で比較的大きなプレゼンスを維持しているアンブロを傘下に収めることで,アディダスなどの有力なコンテンダーとの競争で優位な立場を築こうということのようです。


 それにしても。昨日までライバルとして位置付けられていたはずの会社が,同じグループになる。ちょっと前の自動車メーカに見られた「合併競争」を思い出す話であります。


 ちょっとオマケで,個人的なことなど。


 もともとラグビーフットボールのほうが身近だったワタシとしては,ラグビー・ジャージの印象が強いんですよね,アンブロは。イングランドであったり,90年代のマンチェスター・ユナイテッドにエキップメントを供給していたこともあり,どうしてもフットボールのイメージが上書きされがち,だったりするのですが,やはりコットンのジャージ,というイメージなのです。
 いまですとトヨタ自動車ヴェルブリッツがアンブロのジャージを採用していますが,やっぱりアンブロのジャージは気になります。


 そんなラグビーフットボールの世界でも,ナイキは結構プレゼンスを拡大していたりするんですよね。イングランド代表だったり,フランス代表チームにエキップメントを供給しているんです。コットン100%だった時代から,いまはラグビーでも高機能素材を使うようになっているし,ジャージ前面にはボールに対するグリップ性を高めるためのコーティングを施すなど,ハイテク化が進んでいます。


 アンブロの経験と,ナイキの高機能性がうまいことシナジーを発揮してくれると,ラグビーフットボールの世界でもかなり力関係が変わっていくのではないか,と思うのです。