駒場のピッチと解けた謎。

大分戦の時には,さすがにビックリしました。


 かつて,駒場のピッチはすごく美しかった。


 そんな記憶があるのですが,フラッドライトが点灯してピッチ・コンディションがハッキリと確認できるようになると,ペナルティ・エリアや両アウトサイドに限らずあらゆる部分に芝が養生しきっていないところが見つけられる。


 いささかひどいなあ,と。


 さりとて,駒場が芝の養生に大きな影響を与えかねないイベントの会場となった,という話も聞かない。それにしては,いささかピッチ・コンディションはよくない。どうしてだろうか,と思っていたわけです。


 そんな疑問が,大宮が苦手駒場克服へ使用料払い前日練習 - サッカーニュース : nikkansports.comという記事から解けたわけです。今回は,ちょっと「芝」にまつわる話を。


 端的に言ってしまえば,

 ピッチが全面冬芝で夏場はうまく養生しないためデコボコ(同記事より引用)


というフレーズに目が釘付けになった,というわけなのです。


 この記者さんの指摘が正しいとすれば,いままでの理解はまったく「的外れ」だったことになります。


 ピッチ・コンディションが悪化していると,ラグビーフットボールであったり投擲競技によるダメージを想像してしまいます。そんなダメージからの回復が思わしくなく,ピッチ管理としても後手に回っていたのではないか,と。この図式が,まったく当てはまらないわけですね。


 ピッチ・コンディションが「外的要因」によって悪化していたわけではなく,そもそもなかなかに「攻めた」ピッチ管理をしていたがために,今年の猛暑の影響をモロに受けてしまった,ということになるようです。


 ちょっと調べてみると,フットボールラグビーフットボールを前提としたピッチを作ろうと思えば,夏芝ならばティフトン種,冬芝ならばケンタッキー・ブルーグラスやペレニアル・ライグラスなどが代表的なようです。ここで,ピッチをシーズン通じて良好なコンディションに維持するためには,ティフトンをベースにしてライグラスやブルーグラスを蒔く,という“ウィンター・オーバーシーディング”という手法を用いるのだそうです。


 しかし。駒場のピッチ管理担当さんはオーバーシーディングという手法を使わず,冬芝だけで勝負に出た。ヨーロッパ的なピッチを理想に掲げたピッチ管理を意識したのでしょう。確かに,スパイクのスタッドにしてもヨーロッパのピッチでは固定式のスタッドではなく取り替え式の(ちょっと長い)スタッドが使われる傾向があるし,ボールの走り方やグリップの感覚も微妙にティフトンとは違うはず。日本のスタジアムとはちょっと違う,欧州的な香りの強いピッチに仕上がっていたかも知れないわけです。


 であれば,大宮さんにとっても全面冬芝のピッチは(コンディションが整っていれば)「大きな武器」になる可能性はあったはず,ということになります。ですが,今年は「猛暑」。この影響から駒場のピッチは逃げられず,大宮さんは悪化したピッチ・コンディションの影響をかぶってしまったことになる,と。


 今年の気候条件を受けて,駒場がウィンター・オーバーシーディングを取り入れるか,それとも今季と同じく冬芝の管理という難しいタスクに取り組み続けるか。個人的には,理想を維持できる管理手法を,駒場のピッチ管理を担当しているひとには是非とも見つけてもらって,「浦和にあるヨーロッパなピッチ」を実現してほしい,と思いますね。