対千葉戦(07−29A)。

数字ではなくて,動的なバランス。


 そのことを,前後半で示したようなゲームだったように思います。


 ということで,千葉戦であります。


 今季,どうしてもお付き合いしていかなければならない“コンディショニング”という部分で,ちょっとした中断期間はいい方向に作用したな,という印象があります。


 立ち上がりから,縦方向への圧力がシッカリと掛かる。また,FWとオフェンシブ・ハーフで構成される攻撃ユニットの距離感が安定しているために,サポートに入る動きがスムーズになる。センターに,この攻撃ユニットがトライアングルを構成して相手守備ブロックのマークを引きつける。この攻撃ユニットの動きに連動するように,右アウトサイドに生じたスペースへとディフェンシブ・ハーフが積極的なフリー・ランを仕掛け,センターに構えていたボール・ホルダーはボールを右サイドへと展開する。ボールをレシーブすると,敵陣深くにまでボールをホールドしたまま侵入,トラバース・パスを繰り出す。そのパスに反応するように,FWはゴール・マウスに詰め,ボールの角度を変え「流し込む」ようなフィニッシュを決めてみせる。


 先取点奪取の場面は,チームが狙っている仕掛けの形がハッキリとピッチに表現されたものではないか,と思うのです。


 そして,前からの仕掛けが機能するということは当然ながら,積極的な相手ボール・ホルダーに対するアプローチが機能している,ということも言えるはずです。このバランスが何らかのきっかけで機能低下を起こしてしまうと,急激にチームの持っている守備バランスが自陣方向へと傾き,守備負担が重くなってしまう。


 守備ブロックの安定性は,浦和の持っている大きな武器。


 確かにその通りなのですが,その大きな武器をさらに安定して使うためには,守備ブロックが仕掛けている網に,相手ボール・ホルダーを的確に追い込んでいくような動きが同時に求められるはずです。その意味で,“プレッシング・フットボール”の要素は決して不要な要素ではないのですが,相手を追い込んでいくようなアプローチが緩くなってしまうと,安定性を持っている守備ブロックをもってしても守備応対が余裕を持ったものとはなりにくくなってしまう。


 そんな「時間帯」ができてしまったことは,確かに課題だとは思います。


 しかし,このゲームでは決定的にバランスを崩してしまったわけではない。むしろ,バランスが悪くなった時間帯を,ベンチ・ワークという外的な刺激が最低限だったにもかかわらず「時間帯限定」にとどめることができていた。このことは前半の戦い方と並んで,このゲームでの大きな収穫ではないか,と思うのです。


 3−5−2という形だけを取り出せば,前後半での変更はありません。ただ,“コンビネーション”という部分では予想外の事態によって,チーム・バランスが微妙な変化を強いられた,とも言えるはずです。そのときに,どのような形でバランス変化を最低限にとどめられるか。戦術的なイメージが共有できている基盤,その基盤をどこまで広くできるのか,という部分が,恐らくは「個」の持っている能力を理解する,という部分と同時に必要とされているのかな,と。


 チームがさらなる成熟を遂げるためのヒントは,こんな部分にもあるのかな,と思うのであります。