対大分戦(07−28)。

いつだったか,スタンフォード・ブリッジが“ビーチ”と呼ばれてしまった時期がありました。


 ピッチに,砂が目立ってしまうような状態だったわけです。


 駒場のピッチは,さすがに砂がハッキリと視認できるほどの状況ではありませんでしたが,決して良好なピッチ・コンディションとは言えない。当初はバック・スタンド側の一部,そしてペナルティ・エリア周辺の痛みが目立つような感じでした。ですが後半に入って,特徴的なライト・ブラケットを持っているフラッド・ライトが点灯すると,全体的に荒れたピッチがハッキリと確認できるような状態でありました。


 さて,大分戦であります。


 立ち上がり,理想的な形で先制点を奪取したところまでは,7連戦最終戦,という事実を感じさせない状態だったように思います。


 3−5−2という基本パッケージは崩さず,最終ラインと右アウトサイドに「微調整」をかけてきました。この微調整が早くも奏功した,というのが先制点奪取の局面だったように感じます。今節スターターから外れた暢久選手が繰り出すクロスとはちょっと違う,低く鋭いトラバース・パスがセンターに向かって繰り出される。攻撃ユニットの「縦」への速度を殺すことのないパスによって,相手守備ブロックがちょっとした隙を作り出す。その隙を冷静に突いて,先取点を奪ってみせたわけです。


 本来の浦和であれば,先取点奪取によって仕掛けの強度を強め,リズムを掌握にかかるような印象があるのですが,今節はここからの加速がなかなか難しかった。


 守備的な部分でのバランスを意識していたからか,アウトサイドが低い位置に構えている時間帯が多かったために,ボールが大きく展開できない状況になってしまった。そのために,仕掛けの方向性がアウトサイドから絞り込んでいくようにセンターへ,という対角線的な動きがなかなかなく,かなり中央に意識が傾いてしまっている状態だったように思います。
 このバランスを修正するべく,ディフェンシブ・ハーフがアウトサイドに開きながら縦に積極的に仕掛けていった局面も見られましたが,本来ならばもうちょっと,アウトサイドのポジショニングが高ければ,仕掛けのバランスが安定したのではないか,と感じます。


 今節における守備面でありますが。


 ごく大ざっぱに言えば,「縦」方向への揺さぶりに対して手を焼いていた,という感じでしょうか。相手はFWを“フィニッシャー”として位置付けるよりも,さらに攻撃を仕掛けていくためのクッションとして位置付けているような感じに受け取れました。
 トップがボールを収めると,そのトップを抜き去るように2列目,あるいは最終ラインに入っている選手がランニングを仕掛け,その選手に対してパスを繰り出す。そのために,ファースト・ディフェンスに入るタイミングが微妙なズレを見せてしまうと,かなり深い位置にまでの侵入を許すことにもなる。

 そのために,守備的な意識が強まると同時にチームのポジショニング・バランスが自陣方向へと引きずられるような時間帯が多くなり,相手にプレー・スペースを与えてしまう,あるいは相手のボール・コントロールに対するパッシブな動きを強いられることで,チームに負荷が掛かるというような状況になっていたようにも感じます。


 主導権を掌握できるはずの状況に,早い時間帯で持ち込んだにもかかわらず,実際に主導権を掌握していたのは対戦相手。しかも,相手の仕掛けを受け止める状態は,決して安定していたとは言いがたい。けれど,浦和は冷静に仕掛けられるチャンスをうかがい,そのチャンスを決勝点へと結び付けた。


 ・・・リーグ戦終盤にあって,「内容」を意識するのは難しい状況です。


 しかも今節は連戦最終戦であって,チームのコンディションが100%などとは到底言えない状態にあるはず。このゲームを乗り切り,「眼下の敵」に対してプレッシャーを掛け続けるためにも「勝ち点3」を奪取することこそが求められる。プライオリティはハッキリしているわけです。
 そして,チームはファースト・プライオリティである「勝ち点3」を奪取し,勝ち点差を維持してみせた。このことは間違いなく収穫,であります。


 ここからは,チームが持っている総合力がさらに厳しく問われていくはずです。


 今節もパッケージが小さく変更を受けましたが,誰がスターターとしてピッチに立とうとも,表現するフットボールにブレがないこと。そして,戦術交代によって,チームが明確にギアチェンジを仕掛けられ,リズムを変化させられること。そういう意味からも,苦しみながら勝利という結果を得たこのゲームは意味がある,と思うのです。