優先順位。

恐らく,リーグ戦制覇を意識しないクラブなどないでしょう。


 ちょっと,フットボール・フリークとして中立的に眺めてみれば。


 国内リーグ戦を制覇する,というのはどのクラブにとっても最優先課題でしょう。特に,現時点でマイスター・シャーレを掌中に収められる可能性を持つクラブ,前年シーズンでいいポジションに付けていたクラブならばなおさらに。


 と同時に,ほかのタイトルもある。そして,Jリーグ・クラブが遠ざかって久しいアジア・タイトルもある。そして,リーグ戦とアジア・タイトルを同時に狙いに行く。


 いわゆる,「二兎を追う」状況です。


 しかし,「現実問題」として「二兎」を追えない可能性があるときに,クラブ・サイドがどのような判断をしていくかはクラブの判断に委ねるべきではないか,と思うところがあります。


 確かに,プロフェッショナルとしての「興行面」を意識するのであれば,Jリーグ規約第42条(いわゆる最強メンバー規定)にも一定の合理性を持っているように思います。また,実際にスタジアムに足を運ぶひとたちに対して,「結果」を出せない可能性もある。この点は無視できないようには思うのです。


 ただ同時に,「優先順位」を付けることを否定したいとは思わないのです。ということで,今回は江藤さんの川崎敗退、1点が遠かった210分(2/2・スポーツナビ)という記事をもとに。


 ごく端的に言ってしまえば,川崎が“ターンオーバー”をシッカリと機能させて「勝ち点3」を奪取していれば(そして,第2戦をモノにできれば),この問題は発生していなかったと思うのです。


 ちょっと川崎サイドの思惑を推察してみれば,「アジアでのプレゼンスを徹底的に高めていく」ことをファースト・プライオリティに据えていたとしてもおかしくありません。ノックアウト・ステージに進出し,準々決勝第1戦はスコアレス・ドロー。もちろん,“アウェイ・ゴール”を奪取できていれば戦術的なオプションは飛躍的に広がったはずですが,それでも「最低限」の結果は引き出した。となれば,第2戦は積極的に仕掛けていきたいところでしょう。


 この時に,(失礼を承知で言えば)「足枷」となるのがリーグ・スケジュールです。


 中東への移動で奪われる時間を考慮すれば,スターターのコンディショニングだけで1週間がつぶれてしまいかねないし,第2戦で仕掛けようもない。チャンスは,すぐ前にある。そのチャンスを生かすためには,優先順位を付ける必要性に迫られる。となれば,「勝ち点3」を奪いに行く(そして,最低でも「勝ち点1」を確保する)ためにもパッケージを変更するという判断になる,かも知れないなと。個人的には,この判断は尊重されるべきだと思うのです。


 ただ,問題だったのは「川崎」というクラブが表現しているフットボール・スタイルが,柏戦でのパッケージではちょっとばかりニュアンスが違ってしまったことにあるようにおもいます。現実的な判断の背景にある要素が,決して盤石なものではなかった,ということになるでしょうか。


 そしてこの問題は,極論するならばJリーグ規約第42条が存在する限りどのクラブにもつきまとう可能性がある,と思います。


 ACLを戦っていけば,ある時点から過酷なスケジュールに直面することになります。特に中東勢との対戦となれば,移動距離は欧州カップ戦の比較にならないほど長く,当然にしてチームに対する負荷になるわけです。ACLを主戦場とするクラブならば,本気になって“ターンオーバー”を導入する必要性があるはずだし,Jリーグサイドも本気でACLを獲ってほしいと願うならば,最低でもACLに参戦しているクラブに対して日程変更や42条に対する適用除外など,バックアップできることはまだあるはずです。


 そして,クラブ・サイドが“ターンオーバー”を使いこなせない背景には,選手層という部分も当然関わるはずだけれど,規約42条の存在も否定できないように思います。いわゆるスターターで構成されるパッケージが固定されてしまうことで,パッケージを作り上げる基盤がなかなか広がっていかない,という部分もあるように思うのです。


 このコラムで江藤さんが指摘していることは,事務局サイド,そしてクラブが本気になって考えなければならないこと(そして,早急に方針を取りまとめる必要があること)ではないか,と思うのです。