対横浜FM戦(07−26A)。

思えば,転換点となったのは2004シーズンだったように思います。


 できるだけ高い位置から素速い攻撃を仕掛けるためのファースト・ディフェンス,というように,攻撃面を強く意識したチーム・コンセプトを持っていたのが,2004スペックの浦和でした。


 この,攻撃的な部分にウェイトを置いた浦和に立ちはだかったのが,横浜FMだったわけです。


 当時の横浜FMは,すごく“リアリスティック”だったような印象を持っています。自分たちの持っているストロング・ポイントを徹底的に押し出していく,というよりも,緻密なスカウティングを基盤に相手の持っているストロング・ポイントを徹底して消し去り,逆襲のチャンスを狙う。攻撃的なタレントを擁してもいるのだけれど,そのタレントの使い方が守備的な方向へとちょっとだけ傾いている。そんな印象を持っています。


 シンプルに攻撃的なフットボールを押し切ることから,守備的な安定性を基盤とするリアリスティックなフットボールへ軸足を移していく,そのきっかけを与えたクラブ,という意識を持っているわけです。


 そして,「高み」を陥れるためのリアリティを身につけた浦和は,「分水嶺」と位置付けられるゲームにおいて「勝ち点3」を奪取できるようになっていった。


 「眼下の敵」に対してさらなるプレッシャーを掛け与えるためには,彼らが勝ち点を奪取できなかったチームに対して,しっかりと「勝ち点3」を奪取していくこと。このタスクをこなしてくれた,というのは非常に大きいのではないか,と思うのです。


 ということで,アウェイでの横浜FM戦であります。


 さて。“ゲームをコントロールする”という部分では浦和に分があったな,と思いますね。


 確かに,中盤での支配力であったり,「局面」における主導権は横浜FMに掌握されている時間帯が多かった。ゲーム開始直後の時間帯,シンプルな仕掛けから前線へボールが供給され,ヘッダーからの先制点奪取が狙えたタイミングがありましたが,浦和が積極的に仕掛けて得点機を作り出した,という形は少なかった。つまり,横浜の中盤での機能性は“キー・パーソン”がサスペンションを受けているとしてもそれほどの低下を見せず,最終ラインも比較的安定した守備応対を繰り返していた,ということになるのかも知れません。


 ただし。主導権を握りながらも先制点を奪取できないという状況は,焦りを生みかねない,ということも言えるはずです。大きな意味で,ゲームを巧みにコントロールしていたのは浦和,という見方も成立するように思うのです。


 フットボールという競技は,心理面も大きく影響してくる。ゲームを表面的には支配しているかのように感じられながらも,実際には守備的な安定性の前に攻撃が跳ね返されていく。リズムを奪われていくかのような印象を持ったかも知れません。


 そして,ハーフタイムを過ぎてから,浦和は仕掛けの強度を引き上げていく。


 プレッシングを高い位置から仕掛けていこうと思えば,チーム全体をコンパクトな状態に維持することで,ボール・ホルダーに対して数的優位を素速く構築できるようにしておく必要があります。そのために,最終ラインは高い位置を保つことが求められるわけですが,背後へのケアを同時に意識しておかなければならない。


 浦和としては,このスペースが重要な攻略ポイントになった。


 先制点,そして決勝点を奪取した局面にしても,起点となったのは右アウトサイドでの縦への突破だったように思うわけです。そして,スターターへと復帰したエースの動きが,センターでのディフェンスを巧く拡散させた。その隙間を縫うように,ボールをゴール・マウスへと滑らせるようにシュートを放つ。


 ・・・リーグ・テーブルから読み取れる関係だけではなく,ここ数節のコンディションを思えば,恐らく厳しいゲームになることは容易に予測できるところですし,リーグ戦全体を考えれば「勝ち点3」以上の意味を持ったゲームという評価も成り立つはずです。実際に,2位のポジションに付けているクラブを沈めてもいる。ポジションを引き上げていくきっかけとして大きな意味を持ったゲームだったでしょうし,今節までの1週間はある意味ポジティブな流れにあったはず。その流れを断ち切らないことには,ポジションを盤石なものとすることはできないし,「高み」を陥れることが難しくなる。さらに言えば,ACLのノックアウト・ステージも挟まっているためにチームに大きな負荷が掛かり続ける時期でもある。そんな厳しいタイミングに,ポジティブな流れを呼び込むことができる。


 ここで奪った「勝ち点3」は大きな意味を持つように思うのです。