Jose Goes.

予測された事態,と言えば言えますね。


 マンUからピーター・ケニオンを引き抜き,クラブ組織を強化しはじめたときに意識していたのは,トップチームのことではなく,むしろアカデミーの抜本的な強化策だったのではないか,と感じます。


 当然,プロフェッショナルである以上,トップチームが安定した成績を収めること(つまりは,勝ち点3を奪取し続けること)が求められますが,同時にクラブがどのような立脚点を持っているか,という部分も大きな要素でしょう。ピーターの古巣であるマンUと言えども,“カルチョメルカート”で積極的な補強を仕掛けてくるのは言うまでもないことですが,同時に下部組織から有望なタレントを引き上げていくという部分は伝統的な良さとして受け継がれています。


 このような姿を望みはじめたとすれば,積極的な補強によってチームの持っているパフォーマンスを高みで安定させ,同時にチーム内でのダイナミズムを維持することを得意とする指揮官と,ビジョンにズレを生じはじめたとしても,不思議はないわけです。しかも,もともとはオーナーと指揮官のビジョンはかなりの部分で一致を見せていたし,戦力獲得という部分ではどちらかと言えば,オーナーが主導的な役割を果たしていたことも否定できない。否定的なニュアンスでの“ポリティクス”に巻き込まれた,という見方もできるでしょうか。


 ・・・タイトルで何のことか,お察しのことでしょう。


 今回はひさびさに欧州ネタ,グラントとクラークがチェルシーを指揮、退任のモリーニョは争奪戦へ(スポーツナビ)という記事をもとにしていこうと。


 直接のきっかけは,欧州カップ戦,ドローに終わったローゼンボリとの対戦だとされ,このゲーム後に緊急の会談が持たれたのだとか。この席で,両者合意のもと退団が決定したというリリースになるわけですが,実際には相当前から「このような事態」は想定されていたわけですね。


 クラブサイドが現場サイドからの補強要求に対して消極的な姿勢へとシフトしている一方で,マーケティングを意識しているかのような戦力獲得をしていることで,ジョゼさんにしてみれば相当な違和感を持っていたはずですし,ピッチでの人心掌握術には長けていたとしてもクラブ首脳とのディプロマシーは得意ではなかった,のでしょう。


 ジョゼさんが残した実績,そしてサー・アレックスも一目置くようなチーム・ハンドリングに対する手腕は最大限に評価されて当然だし,チェルシーを追いかけているフットボール・フリークがジョゼさんの退団(実質的には解任でしょう。)反対の意思表示をするのだって,理解できるわけです。ただ,ピッチで戦う相手のことに集中できず,クラブ内部でも「闘う」必要があったのだとすれば,ジョゼさんとしても両者合意での退団は「望むところ」だったのかな,と。


 となると,やはり気になるのは次期指揮官であります。


 相当なパーソナリティを持っているひとでないと,巧みな人心掌握術と戦術眼によってチームをコントロールしてきたジョゼさんを超えることはできないし,チームが空中分解しかねない。フース・ヒディンクという話もあれば,紹介した記事にあるようにファビオ・カペッロマルチェロ・リッピという話もあるようです。


 スタンフォード・ブリッジは当分,賑やかなことになりそうであります。