浦和ユース対星稜高校戦(高円宮杯2007)。

理想的な形で,ノックアウト・ステージへと進出することができる。


 もちろん,ファイナル・スコアも大きな意味を持つ。


 もうひとつのゲームが同時刻開催であり,当面マークすべき存在である静岡学園の動向が読めない以上,彼らが第2戦で示したパフォーマンスがひとつのベンチマークとなる。そのベンチマークを超えたのだから,評価されて然るべきだろう。そして,グループリーグでの通算成績は2勝1分け(勝ち点7)。負けていない,ということは短期決戦のラウンドロビンを戦ううえで大きな要素となる。


 だが,ファイナル・スコアだけが大きな意味を持つわけではない。


 第2戦から1日開いただけの連戦であり,当然披露などを考慮してパッケージを変更する必要性が生じる。そのパッケージ変更を受けてなお,チームとして表現できているパフォーマンスに落ち込みを生じることがなかった。むしろ,チームが持つリズムを加速させたような印象さえ持つ。


 アップビートなリズムを止めることなく,ノックアウト・ステージへ。


 そんな流れを作ることができたことこそ,最も大きな収穫というべきではないか。ということで,グループリーグ最終戦であります。


 中野田ではフリーマーケットが同時開催だったようで,第1試合が前半30分前後の時間帯に駐車場へとクルマを乗り入れたのですが,進入路の木陰にびっしりとクルマが。「駐められないかも」などと思いながら,南広場に近い方の駐車スペースへとクルマを進めていくと,たまたま自転車で通りがかった警備員氏に開いている駐車スペースを案内していただけたのであります。


 この時点で,結構な観客数を想像しましたが,予想通りでありました。


 さて,最終戦の対戦相手は星稜高校であります。


 相手は第2戦終了時で1分け1敗と,このゲームで「勝ち点3」を奪取しないことにはノックアウト・ステージへ進出できる可能性がなくなってしまう。となれば,リアクティブなフットボールはそれほど展開してこないだろう,と考えていたわけです。ただ,彼らは第2戦において,大きな「隙」を見せてもいた。その隙が埋まっているかどうか,という部分も当然,このゲームの帰趨を握る鍵だったように思うのです。


 ということで,星稜のことからはじめたいと思います。


 グループリーグが終わりましたので,端的に指摘してしまえば。


 最終ラインのバランスが,センターにかたよってしまう時間帯があまりに多いのです。4バック・システムを採用する動機としては,サイドでの数的優位を構築する,であるとか,サイドアタックで後方からの分厚いバックアップを狙う,というものがあるように思います。このケースでは,前線がサイドに流れるというよりも,オフェンシブ・ハーフとサイドバックがどれだけスムーズにポジション・チェンジを繰り返しながら仕掛けていけるか,という部分が大きな鍵を握るように思いますし,ある程度サイドバックが外側に開いておくことが求められるはずです。


 しかし,であります。


 星稜の4バックは中央に4人が固まってしまうケースが多く,サイドでの攻撃的なコンビネーションはサイドに開いた前線とオフェンシブ・ハーフで構成されることが多いのです。となると,オフェンシブ・ハーフの裏側には比較的大きなスペースが生じる。ここをどのようにして攻略するか,という部分を強く意識すると,主導権を掌握できるのではないか,というわけです。


 この部分を,浦和ユースもシッカリとスカウティングしていたようです。


 基盤としているのは,比較的現実主義的な戦い方です。短期決戦のラウンドロビン,限りなくトーナメント的なリーグ戦ですから,ポゼッションを高めながらエレガントに攻撃を組み立てていく,というよりもシンプルに攻撃を組み立て,フィニッシュへと持ち込むというイメージを持っているようです。このイメージを基盤としながらも,最終戦ではパス・ワークを基盤として相手守備ブロックを引き出し,生じたクラックに対して飛び込んでいく動きによってフィニッシュへと持ち込む,というような形だけではなく,アウトサイドからの積極的なドリブル&ラン,という形も多かったように思います。


 そして,ドリブルをアウトサイドで仕掛けながらセンターへと絞り込んでいく,だけでなく,深い位置までドリブルで侵入した後に積極的にシュート・モーションに入るというような形もあった。センターでも確かに崩せているような局面がありましたから,ちょっと強引に映るようなタイミングもありましたが,第2戦で静岡学園が作り出した形をシッカリとヒントにしているような印象を個人的には持ちました。


 さて,ごくカンタンにゲームの流れを振り返っておきますと。


 前半は,風上から風下へと攻め下ろしていくエンドを選択します。星稜は第2戦とは異なり,積極的に仕掛ける姿勢を比較的強く示していきます。この仕掛けに対して,シッカリとした守備応対を繰り返す中から,早い時間帯で先取点,追加点と奪取することに成功し,2−0とリードを築きます。ここから,ちょっとゲームの流れは星稜サイドへと傾き,アディショナル・タイムに突入しようかという時間帯に,1点を返され,2−1でハーフタイムへと入ります。


 ハーフタイムを挟んで,最初に仕掛けが得点へと結び付いたのは浦和ユースでありました。後半立ち上がりの時間帯に追加点を挙げたことによって,リズムを再び掌握すると,その掌握したリズムを手放すことなく追加点を積み上げていく。そして,ファイナル・スコアは6−1と最終戦を非常にいい形で終えることになるわけです。


 ・・・さて,第2戦ではちょっと気になった,ボール処理での不安定性でしたが。


 最終戦では,ほとんど不安定性を見せることはありませんでした。それほど深くにまでボール・ホルダーが入ってきた局面が多くない,という事情もありますが,第2戦と比較して,ボール処理に対する判断が安定したことで,不用意な形で逆襲を受けるような形はなかった。修正がうまくいっているということではないか,と思います。


 この後のスケジュールでありますが,22日にラウンド16,24日にはQFがセットされており,連戦となっています。グループリーグで作り上げたいい流れを途切れさせることなく,ノックアウト・ステージ初戦に入っていくことで,第2戦〜最終戦へと見せてくれたような流れを作り出してほしい,と思います。