浦和ユース対青森山田戦(高円宮杯2007)。

ファイナル・スコアだけを取り出せば,確かに安定しているようには感じられます。


 ですが,セカンド・ラウンド(決勝トーナメント)を射程に収めるのであれば,しっかりと修正しておかなければ課題も出ているゲーム,という評価もできるのではないでしょうか。


 高円宮杯,であります。


 グループB(第1戦)の状況を振り返っておくと,浦和ユースと静岡学園が1−1のドロー,星稜と青森山田が0−0のドローと,得点差だけで順位が分かれている,という状況であります。決勝トーナメントへの切符を意識するのであれば,第2戦において「勝ち点3」を奪取できるかどうかがグループリーグでの主導権を掌握するためには大きな意味を持つはずです。


 そんな視点で,埼玉スタジアム2002・第2グラウンドへと足を向けてみたわけです。ちょっと遅刻してしまったために,本当の立ち上がりの状態までは把握しきれていないのですが,立ち上がりの時間帯,積極的に仕掛けてきていたのは青森山田でした。


 対して,浦和ユースは比較的,現実的な戦い方を強く意識していたように感じました。当然,天候などを含めたコンディションを考えれば,積極的に中盤からボール奪取を意識したプレッシングを仕掛けていくよりは,ボール・ホルダーを守備ブロックへと追い込んでいくような守備戦術を基盤に置き,そこからシンプルな攻撃を仕掛けていく。先制点奪取の局面も,典型的なカウンター・アタックの図式でした。中盤から前線を追い越しながらドリブルを積極的に仕掛け,左足を振り抜いてシュートを放つ。主導権,という意味では青森山田に攻撃面での主導権を握られかけていたような時間帯でしたから,前半12分という,立ち上がりの時間帯での先取点は,チームに流れを引き戻すいいきっかけになっていたように思います。


 浦和ユースは前半35分にも,CKからDFがヘディングで得点を奪取,2−0でハーフタイムを迎えます。後半もこの流れで,などという意識を持って見ておりましたが,実際には最初に書いたように「課題」が見えたのが後半だったように思うのです。


 ごく大ざっぱに言ってしまえば,局面に対する「状況判断」ということになるでしょうか。


 相手の攻撃を巧みに抑えられている,はずなのですが,相手がコントロールを失ったボールをどのようにして処理をするかという部分で「迷い」を生じる時間帯がちょっと多かったように思うのです。


 前半とは異なり,中盤でのパス・ワークを基盤にして攻撃を組み立てる,ということはせず,比較的ロングレンジ・パスを重視した攻撃の組み立てを青森山田は意識するようになります。すると,ルーズになったボールがSBの裏であったり,CBの隣のスペースに入ってくることになります。


 ここで,どのような処理をしていくかという部分がハッキリしていないような印象を受けたわけです。まず,SBが高い位置を取っているならば,CBが中盤のカバーリングを意識しながらボールへとアプローチし,コントロールを回復する,という形になるでしょうか。そのときに,相手からのプレッシャーが厳しければ,無理に前方へとフィードするのではなく,クリアという選択肢もありますし,ボールの勢いが強く,かつゴールラインに近い位置であるならば,巧みに身体を使いながらGKに持ち込む,という選択肢もある。あるのですが,どのプレーを選択するか,という判断の時点での「迷い」というか,「遅れ」がこのゲームでは目立ちました。


 2−0という状況がもたらしたものかも知れませんが,次のプレーへとつなげるまでの時間的な遅れによって,相手がボールへのアプローチを再び仕掛けられるようになってしまい,結果として自陣深いところから逆襲を受ける,などという形も数少ないながら見られてしまったわけです。


 守備面では,修正すべき課題として意識されなければならないようなプレーもありましたが,攻撃面では比較的組織的な部分と,ひとりひとりが「仕掛けていく」という意識がシッカリとかみ合っているような感じがしました。もうちょっとだけ,ボールを丁寧に扱えると,さらにチャンスが広がるのに,という局面も確かにあったような感じがしますが,それでも「仕掛け」への意識は高かった,と思います。


 この結果によって,浦和ユースは1勝1分け(勝ち点4)ということになり,静岡学園の結果次第ではありますが,グループリーグでの主導権を掌握することに成功しました。トップチームとは違って,4−4−2の布陣を採用し,カップ戦,という部分を意識しながら現実主義的な戦い方を徹底する方向へとバランスを傾けている。ならば,後半に出てしまった守備面での不安定性をシッカリと修正し,守備ブロックが攻撃的な部分での基盤となるように,再び意識付けをしつつ,ピッチを大きく使った仕掛けをさらに強く意識する必要があるように感じます。


 最終戦,どのような戦い方を見せてくれるか,楽しみであります。