ベース・セットはどこに(U−22)。

クルマであったり,バイクのパフォーマンスを引き出すセッティング。


 しかし,やり方を間違えてしまったり,手順を踏まずにセッティングをはじめてしまうと,際限なき迷路にはまり込んでしまうこともあったりします。本来,クルマやバイクが持っている潜在能力を100%引き出すことができるように施すのがセッティングであって,抑え込むための手順ではないのですが,場合によってはマシンの性能を必要以上に抑え込み,扱いやすくするどころか扱いづらくしてしまうことだってあるわけです。


 さて,U−22代表であります。カタール戦を最小得点差でモノにし,予選順位も1位へとポジションを上げた。ホーム・国立霞ヶ丘において,しっかりと結果を出した,ということになるかと思います。


 最終予選という,「結果」がすべてに優先する状況に入っていますから,あまり「基礎」にかかわる部分での話はすべきではないのかも知れませんが。“ベース・セット”と言いますか,チームとして戻るべきパッケージは何でしょうか。


 ごく大ざっぱに分けてしまえば,最終ラインからディフェンシブ・ハーフの位置あたりまではほぼイメージが固定されているし,基準となるパッケージが構築されているのではないか,という印象があります。
 しかし,攻撃ユニットを考えるとこの印象は正反対のものへと変わります。
 そして当然,攻撃ユニットのパッケージが流動性を持ったままである,ということは同時に,ボール・ホルダーに対するファースト・ディフェンス,その仕掛けイメージがチームとして徹底されないことも意味するように感じられます。となると,どんなに守備ブロックが熟成過程にあろうとも,余裕を持った形で守備応対ができないことになるし,攻撃を仕掛けようにもSBがどのようにしてサイド・ハーフとの連携を構築するか,あるいはFWと中盤(当然,最終ラインからの攻撃参加をも含みます。)との縦の関係がどれだけ引き出せるか,という,仕掛けに直結する部分も不安定性をはらんだままになってしまう。


 3−5−2であるにせよ,4−3−3(形式的には4−5−1のケースもありますが)にせよ,あるいは4−4−2にせよ,恐らくはこのチームの最大の武器であるアウトサイド,彼らが持っている能力を最大限に引き出すパッケージを,“ベース・セット”として位置付けておくべきなのに,このチームは明確に基本となるパッケージを意識していなかったように感じられるのです。
 それでも,個の持っているパフォーマンスによって,何とかシステムを機能させることはできているわけですが,コーチング・スタッフが持っている戦術イメージがより明確に表現されたパッケージが,本来ならば見たい。


 「選手」の持っているパフォーマンスをテストする,ということは多かったように記憶しているけれど,パッケージを見極めていく,という過程はなかなかお目にかかれず,相手に応じて柔軟にパッケージを変更しているようには見えるけれど,実際には選手の持っている即興性に多くを依存してしまっているようにも感じられる。
 相手に応じて,パッケージを変更すること自体,それほど間違ったものだとは思いません。思いませんが,攻撃的であるにせよ,守備的であるにせよ“ギアチェンジ”を実感できるのは,ベースがあるからこそ,だと思うのです。この整理をしてきたでしょうか。


 JFAサイド(特に,技術委員会など)が厳しい姿勢を崩していないのは,ベース・セットが揺れている(もっと厳しい見方をすれば,ベース・セット自体を構築しないで闘ってきてしまった)ことにあるのかも知れない,と思ったりするのです。