競技を超えた共通項。

スコッドよりも戦闘的なフェイス。ありえないでしょ(あいさつ)。


 ラグビー日本代表の指揮官,ジョン・カーワン(JK)さんであります。


 書店で「ラグビー・マガジン」誌をチラッと見たのですが,実にインパクトのある表紙でありました。“自身が現役に戻りたいのではなかろうか?”と思うほどに,モチベーションの高さが眼のチカラに出ているような,そんな扉写真でありました。


 同じように,「ナンバー・プラス」誌でもインパクトある扉を作り上げています。大野選手や大畑選手(残念ながら,負傷によってチームを離脱せざるを得なくなってしまいましたが。),箕内選手よりも迫力ある姿を見せているのは,やっぱりJKさんであります。


 かねてからJKのイメージするラグビーと,イビツァさんの指向するフットボールは近しいものがあるな,と感じているのですが,“ナンバー・プラス”に収められている指揮官インタビューを読むと,その印象はさらに濃くなるように思います。そこで,ちょっと営業妨害にならない程度に,このインタビュー記事を取り上げてみることにします。


 このインタビュー記事,村上晃一さんによってまとめられているのですが,JKの志向するラグビーフットボールを簡潔に表現した,

  日本代表のヘッドコーチ就任から、カーワンは一貫して「ジャパニーズ・スタイル」の構築を掲げた。日本人の敏捷性を生かした素速い攻撃と、徹底して前に出る組織防御である。


という文章は,イビツァさんが狙っている姿とある程度の相似形を描いているように思えるのです。FWであろうと,攻撃的なミッドフィールドであろうとも,積極的に守備面で動くことを要求する。ボール奪取位置を低い位置に設定するのではなく,極力高い位置に置く。そこからの仕掛けは敏捷性を最大限に生かしていくような方向性を狙う。「縦への鋭さ」を持った選手をアジアカップ後に選出してきたのは,「敏捷性」という部分でも説明できるはずです。


 もうひとつ。JK自身のコメントで,

 「『見て、判断、アクション』。・・・ディフェンスの空いたスペースを見ることができれば、判断、アクションが自ずとついてきます。ゲームをするには、見て、判断、アクションという順番しかないのです」。
 『・・・日本の場合は、逆に組織化されすぎているので、もっと判断させることが大事だと考えました。しかし、大事なのはバランスです」。


という部分がすごく“つながっている”ような印象を持っています。


 イビツァさんが課しているトレーニング・メニューをアウトサイドから見る限り,コレクティブなフットボールを要求しているようにも感じられます。しかし実際には,局面ごとにおける的確な判断を求めているように思うのです。そして,この判断,という言葉には“チャレンジ”という言葉も含まれているようにも。


 ひとりひとりの選手が敏捷性に優れていたとしても,判断に関して素速さがなければ,実際にチームとして表現できる敏捷性は減退してしまうことになりかねない。もっと有機的に,ひとりひとりの敏捷性を結び付けるには,実際には判断速度であったり,その判断を基盤とするアクションが素速くなっていかなければならない。当然,アクションが素速くなるには,自分が積極的にチャレンジしていくという姿勢が裏付けとして必要となる。


 ラグビー・ネイションズ,あるいはフットボール・ネイションズへ真正面から勝負を挑むためには,自分たちの持っている強みを最大限に引き出していくアプローチが必要。恐らく,前提条件は変わらないはずです。そして,JKが指摘したことはちょっと謎かけのようなイビツァさんの言葉と,ほぼ同じ意味でもあるはず。「オシムの言葉」が分からないときは,JKのコメントを読んでみて,そのあとに再びイビツァさんのやっていることを観察してみる。案外,理解が進むのではないか,と思うのです。