対FC東京戦(07−22)。

結果的にはリアリスティックに「勝ち点3」を奪取したゲーム,ということになるでしょうか。


 ただ,「リアリスティック」という要素は残念ながら,時間帯限定でちょっと使えないような感じがありますし,このゲームでの課題ということになるかも知れません。


 FC東京戦であります。


 概して,3バックを主戦パッケージとしている浦和は4バックへの対応があまりよくないところがありますが,今節にあってはアウトサイドの主導権を巧く抑えられたからか,ボールを積極的に大きく展開するという部分ではそれほど悪くない立ち上がりだったように感じます。


 ボール・ポゼッションを基盤としながら,リズムの緩急を使いながら相手守備ブロックの隙を突く,というような仕掛けではなく,「縦」方向への鋭さを最大限に生かした,相対的にロングレンジ〜ミドルレンジ・パスを多用した仕掛けを押し出し,その仕掛けがしっかりと機能しているような印象はあったわけです。とは言え,この仕掛けがフィニッシュへと直結しない部分があっただけに,ゲームのリズムを決定的に掌握できないという部分もあったように感じられます。また,相手もシンプルな仕掛けを強く意識しながらボール・ホルダーに対するアプローチを続けているようなところがあった。そんなリズムの澱みを突かれるかのように,ショート・カウンターのようなシンプルな仕掛けから先取点を奪われる。


 一定程度,ゲームのリズムを握りながら,最終的なフィニッシュの部分でリズムを決定的に掌握できないがために,逆にリズムを手放してしまう。この段階で,ゲームの主導権を再び引き戻すきっかけは,アウトサイドであったように思います。


 その背景にあったものはポジショニング(オフ・ザ・ボール)ではなかったか,と。


 今節,アウトサイドが低い位置からボールを収め,ドリブルを仕掛けながら上がっていくという局面よりは,高い位置でボールを収める形が相対的に多かったように感じられます。当然,相手は浦和がアウトサイドに攻撃的な重心を置いていることを理解しているはずだし,それだけにSBとサイド・ハーフが連携してアウトサイドを抑え込む,という戦術イメージを確認しているはずです。となれば,アウトサイドが低い位置を取ってしまえば相手の戦術に乗ってしまうことにもなる。前半に関して言えば,ボールの展開力がアウトサイドに攻撃的なポジションを維持させ,スペースを狙ったパス・ワークを可能にしたような部分が感じられますし,ゲームの主導権を取り戻すきっかけとなったように感じられます。


 対して後半は,アウトサイドが守備を意識したポジションへと押し込まれる時間帯が増えてしまった。最終ラインでの守備応対,という部分で決定的な破綻をきたすようなことはなかったものの,チーム・バランスが最終ライン方向へと傾いてしまったために守備応対での安定性,という部分ではリズムを失ってしまった時間帯が多かった,ということになると思います。相手ボール・ホルダーを巧妙に最終ラインへと追い込んでいく,という方向性でのプレッシングが安定して仕掛けられず,中盤がルーズな時間帯が増えてしまうことで,最終ラインでの守備応対が余裕を持ったものとならなくなるとともに,守備応対での安定性を確保するためにアウトサイドが下がってしまうことで,さらに攻撃面での機能が落ちてしまう,という悪循環に嵌ってしまったような感じがあります。この部分は,「課題」として意識されるべき部分であるように思います。


 また,後半の失点に関しては“セルフ・ジャッジ”という要素も絡んでいるように思いますが,エリアへと飛び出してくる選手に対するマーキングの確認,という部分で甘さを見せてしまったような印象もあります。「縦」に鋭い攻撃に対する守備応対と並んで,修正をかけるべき部分であるように感じられます。


 ・・・ごく大ざっぱに言ってしまえば,今節においてはどれだけ鋭く,正確にカウンター・アタックを仕掛けられたか,という要素が「勝ち点3」を奪取できたか否かを分ける要素になったように思います。


 相手にしても,ボール・ポゼッションから攻撃を組み立てるというよりは,高い位置からのプレッシングからシンプルにボールを前線へと収め,攻撃を仕掛けていくというようにハーフコート・カウンター的な戦術イメージを持っていたように感じますし,浦和の戦術イメージも,縦方向に鋭いシンプルな仕掛けが中心に意識されていたように思います。


 物理的なコンディションを思えば,現実主義的であることはやむを得ないこと。むしろ,コンディションを巧みにコントロールしながら「勝ち点3」を奪取していくことも高みを陥れるためには必要な要素だと思うだけに,今節の結果は評価していいと思う。むしろ,守備面において現実主義的な戦術を徹底できなかった部分は,仕掛けの基盤がボール・ポゼッションをベースとするものと切り替わったときにさらに大きな課題になってしまうことも考えられるだけに,連戦時期にはかかっていますが,確認を徹底しておくべきものではないか,と思うのであります。