対甲府戦(07−21A)。

浦和のDNAとも言うべき,“フルコート・カウンター”。


 カウンター・アタックを繰り出す鋭さによって,「勝ち点3」を奪取することに成功した。
 そんな印象を持っています。
 国立霞ヶ丘でのアウェイ・マッチ,甲府戦であります。


 ごく大ざっぱに,守備面と攻撃面とに分けて考えてみますに。


 守備面では,相手ボール・ホルダーを守備ブロックへと巧みに追い込んでいく形でのディフェンスは残念ながら機能している時間帯がかなり短かったな,と思います。
 たとえばボール奪取位置が限りなく高い局面だと,相手が展開してきたフットボールは「脅威」を伴ったものとなっていたように感じられます。相手守備ブロックがハーフウェイ・ライン近くにまで積極的に押し上げていられる(=徹底してコンパクトな陣形を維持できる)時間帯ですと,ショート・パスを基盤とする仕掛けが有効に機能する。守備ブロックを引きつけていることで,物理的には狭いはずのプレー・エリアを果敢に抜け出しながら数的優位を構築しようとする。そのために,ボール・ホルダーを追い込むようなファースト・ディフェンスがなかなか仕掛けられず,ディフェンス・ラインが持っているパフォーマンスに多くを依存するような形になってしまった。
 そのために,攻撃面で“フルコート・カウンター”が有効な武器となった,という部分もあるように思うのです。


 相手はボールに対して比較的人数をかけ,今節においてはセンターを比較的強く意識した仕掛けを繰り出していたように感じます。そのために,4バックを操っているのにサイドでの主導権を手放すような時間帯が多かったように感じられます。中盤,あるいは前線とのコンビネーションによって,“ダブル・アウトサイド”という物理的な数的優位の状況を構築することで,アウトサイドの機能性を減少させる,というアプローチがとられているようには感じられず,自分たちのスタイル,という方向へと意識をより強く傾けているように受け取れました。
 そのために,アウトサイドが攻撃面で起点として機能できる時間帯が多くなっていった。特に,左アウトサイドからの仕掛けは,相手守備ブロックにとって相当な脅威となったように思います。


 また,2トップの縦方向への鋭さを警戒するあまりに,本来もうちょっとワイドに構えていていいはずの相手守備ブロックがセンターに片寄ってしまう時間帯も多かった。
 このことを攻撃面から考えれば,縦方向でのプレー・スペースが広がる,ということを意味するはずです。アウトサイドからセンターへと,絞り込んでいくようなパス・ワークから決定的な局面を作り出すだけでなく,もっとシンプルに,アウトサイドが相手陣内深くにまで入り込みながら,センターへとボールを折り返し,エリアへと詰めてくる前線,あるいはミッドフィールドの選手がフィニッシュへと持ち込む,という形が機能しやすい形になっていた,と思うわけです。


 という部分を考えると,今節においては中盤を基盤としたビルドアップ・ベースの仕掛けを繰り出すのではなく,守備ブロックによる徹底した守備応対から「縦方向への鋭さ」を最大限に引き出したシンプルなフットボール,というスタイルは確かに現実主義的なフットボールではありますが,結果を引き出すための最適解,なフットボールでもあったように思います。


 ・・・さて,今節の「勝ち点3」によって首位を奪取したわけでありますが。


 相手のフットボールにも,2007スペックを徹底的に熟成していくためのヒントがあるような感じもしています。ちょっとそんなことを。


 ひとりひとりの選手が持っているパフォーマンスであったり,ポテンシャルは相当に高い。
 ただ,その高いパフォーマンスを,ちょっとだけ組織的に束ねるポイントを整理するだけでも,攻撃がより脅威を増すように思えます。


 たとえば。確か暢久選手がボールをホールドしていたタイミングだったかと。


 右アウトサイドからセンターへと切り込んでいくようなドリブルを仕掛けていたように記憶していますが,その絞り込むような動きに連動する形で右アウトサイド,深い位置へと走り込んでいくサポートの動きがありました。このときに,個人的には“シザース”を仕掛けていくかな?と思ったわけです。
 ボール・ホルダーに対する相手守備ブロックのマークを逆手にとるようにボールを動かし,それまでボールをホールドしていた選手は,さらにエリアでマークを引き剥がすような動きをする中で守備ブロックの綻びを突きにかかる。


 そんな形が,案外に浦和では少なかったりする。


 もちろん,組織ガチガチ,というのは読まれやすい。ちょっとした時間差を耐えられるようになると,守備応対が安定してしまうからです。
 ただ,個の持っている高いパフォーマンスを基盤としながらも,タイミングに応じて柔軟に組織的な仕掛けにも対応できるという選択肢があるとないとでは,仕掛けに対する怖さが違ってくるように思うのです。


 「戦術的な」柔軟性とともに,局面ベースでの「仕掛け」の柔軟性を意識することで,さらなるチームの熟成が進んでいくのではないか。シビアな闘いが続くはずの後半戦,コンディショニングとともに重要な要素になるかも知れない,と思うのであります。