セミ・プロフェッショナル。

フットボール的に言えば,実質的なディビジョン2(2部リーグ)ですね。


 1部リーグに相当するのが,“トップリーグ”であります。
 このトップリーグへの昇格を賭けて戦われるリーグ戦が,各地域協会が主催するリーグ戦でありまして。つまり,地域リーグという形を取るわけです。
 関東大会が主管するのはイースト11,九州協会ですとトップキュウシュウ。そして,関西協会が主管する2部リーグが,トップウェストであります。この地域リーグを勝ち抜くと,トップチャレンジというプレーオフ(短期リーグ戦)出場権を獲得,このリーグ戦で上位2チームに食い込むことができると,トップリーグ昇格を果たすことができるのであります。
 2006〜07シーズンは,九州電力九州電力キューデン・ヴォルテクス)と,三菱重工相模原ラグビー部(2007〜08シーズンより三菱重工相模原ダイナボアーズ)が昇格を果たしています。


 そんな地域リーグで,恐らく面白い存在になるだろうチームがNTTドコモ関西であります。


 こちらの記事(共同通信社 - スポーツナビ)にもあるように,かつてはスティーラーズを率い,ラグビー日本代表監督としてのキャリアもある萩本光威さんがヘッドコーチ(つまりは監督)に就任した,というわけです。


 NTTドコモ関西ラグビー部と言えば,日本代表に選出されたSO,ジェームス・アレジ選手が在籍するチームですが,なかなかトップウェストまではチェックできていなくて,正直言えば「地域リーグを主戦場としながら代表選手を輩出するようなチームとは,どんなチームなのだろうか」という疑問がありました。
 そのチームを率いているのが,萩本さんだったとはちょっと驚き,であります。


 と同時に,すごく楽しみなのも確かです。
 というのも,「他クラブを率い,実績を残した監督が新たなクラブの指揮を執る」というレア・ケースだからです。


 とは言え,レア・ケースはもうひとつ存在していまして。コカ・コーラウェストレッドスパークスもNTTドコモ関西ラグビー部と同じように,かつては他クラブを率いていた監督を招聘しているのです。向井昭吾監督は,もともとは東芝府中ラグビー部で日本選手権3連覇を経験するなどの実績を残し,機動力,展開力を徹底して武器とするラグビーを押し出したコーチです。ラグビー日本代表監督を経て,2004年からレッドスパークスを率いています。


 ラグビーフットボールでは,なかなかコーチが他のクラブの指揮を執る,というケースは見られません。JRFUへと出向する形で年代別代表チームであったり,フル代表を率いる,というケースはあるにしても,実際にはトップレベルのリーグでのコーチ経験を持ったひとが,下部リーグであったり大学リーグを戦うクラブ,チームの監督(あるいはヘッドコーチ)に就任する,というケースはなかなか多くはないわけです。
 理想論を言うようですが,トップレベルでの経験を直接的にフィードバックできるのは監督経験者であるはずで,選手やクラブのオープン化よりも先に意識すべきは,コーチング・スタッフのオープン化ではないか,と思っています。実績を残している監督が,「後進に道を譲る」という形を取ってコーチの第一線を退いてしまうというのは,アウトサイダーから見れば「もったいない」以外の印象はありません。チーム・ビルディングであったりメンタル・マネージメント,スカウティングやトレーニング・スケジュールの構築などにおける経験を必要とするクラブ,あるいはチームは多くあるはずで,そんなチームに積極的にノウハウが移動していくことで,全体としての競技レベルが上がっていくはずだ,と思うのですが,なかなかラグビーではそんな循環が見られない。


 そんな視点から言うならば,向井監督であったり萩本ヘッドコーチは“セミ・プロフェッショナル”な形で他チームの指揮を執っている,とも言える。


 ラグビーフットボールにおけるプロフェッショナル化,その第一歩は案外に選手側からはじまるのではなくて,コーチ側からはじまるのかも知れない。そんな(いささか楽観的ではありますが)期待を持っていたりもするのであります。