ミドルレンジの記憶。

2004シーズン。それまでのフットボール・スタイルから変化をはじめようとした時期。


 ちょうど,転換点に加入してきたフットボーラーであります。


 それまでのフットボール・スタイルは,どちらかと言えばリアクティブなカウンター攻撃を基盤に据えたものだったように思います。そのスタイルを,同じカウンター攻撃を仕掛けるにしても,積極的にボールを奪いに行くというスタイルへとシフトした。比較的高い位置からボール奪取を仕掛け,ディフェンシブ・ハーフであっても積極的に前線へと攻め上がっていくことで攻撃面での分厚さを作り出していく,という戦術的なイメージを押し出しはじめた時期,であります。


 そんなスタイルと,合っていたような印象があります。


 クラブがアップした出場記録に関するリリース(オフィシャル・PDF)を見ると,2004〜06シーズンにおける得点数は5。絶対数としては,それほど多いわけではないですが,不思議と印象に残っていたりするのです。


 ペナルティ・エリアを足元の視界に収めるか,というようなポジションから,守備ブロックの隙間を狙い澄ますかのようにシュート・モーションに入る。滑らかな軌道を描くように,ゴールマウスを捉える。そんなミドルレンジからのシュートが。


 プロフェッショナル・フットボーラーとしてのキャリア,チームを強力に支える立場。


 フットボーラーとしての意識を思えば,天秤にかけるまでもないことのはずです。


 それでも彼は,チームを支える,という選択をしてくれた。それだけに,2006シーズンが終わった時点で「移籍」ということがあったとしてもおかしくない,と思ってもいました。


 勝手な思い込み,ではありますが,半年のタイム・ラグはオファーという物理的な条件もあるけれど,それとともに浦和というクラブへの愛着があってのこと,のように見えたりします。


 ピッチに表現するという意味ではないことが多かったけれど,“ハート”を感じることのできたフットボーラー。そんな選手に感謝,であります。